宝石のカケラ 【stxxx】

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『ゴホッゴホッ…ゲホッ……』





カランと音を立てて落ちたのは
キラキラ輝く紫色の宝石。


"今日は紫か…"なんてぽつりと呟いては
日課のように見るようになったアルバム。




たくさんの写真の中の私たちは
みんながみんな笑顔。



楽しそうにお酒を飲んでるところとか、

カラオケで高得点取れて喜んでる姿とか、

体育館で壮大に転んでいる姿とか、

ケーキを並べて誕生会をしている姿とか、



見れば見るほど幸せな写真。











でも私は、もう

何ひとつ思い出せなくて。











写真を見ても、
この時何があって笑ってるのかもすら

覚えてない、いや、忘れてしまっているのだ。







「やっほー！お邪魔するよー？」

『……』

「A……？」

『……嫌だよ、なーくん……』







本日来る予定だったなーくんの
胸の中に飛び込んでは、私はたくさんの涙を零した。

なーくんは、優しく私の背中を撫でてくれた。



その温かさも、

その優しさも、

その落ち着いた声も、

その包容力も、



私は、全部全部、
忘れてしまうのでしょう？







『なーくん…忘れたくないよっ…』

「…そうだよね」

『なんで私なのっ……やだっ……』

「ほんとなんでAだったんだろうね…」

『なーくんっ…なーくんっ……！！！』



「俺は、

君が記憶をなくしても
隣に居続けられる自信がある。

だから、忘れないでなんて言わないから。




お願いだから、


……居なくなんないでね…」







あぁ、私は、また
心配させるようなことをしてしまったのだろう。


そのことすら忘れてしまうなんて……










この病気は本当に

タチが悪い。




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