裏切られるくらいなら、愛なんていらない【鬼滅の刃】

拾壱 ページ14

･


『師範！！

お久しぶりです、任務ご苦労様でした
そう言えばこの間──』

深く頭を下げ、労いの言葉をかけようとした

いつもなら…“A！お前もご苦労だったな！！”
とニコニコしながら言ってくれる

だけど今日はその言葉も愚か、私を素通りし後ろにいる舞香の元へ行ってしまった師範


『っ…し、はん？』

煉「舞香…ケガはないか？Aには何もされてないか？」


…っ！何それ…
別に今まで私は舞香に暴力、嫌がらせなどは何もやっていない

むしろ間接的にやられている方だ



それに…いつ師範と知り合ったの？
師範はずっと任務に出ていたはず…






…あぁ、私は遂に師範にまでも嫌われてしまうのかな？

そんなことを考えるだけで胸が張り裂けそうなくらい痛い



『…私は何もしていません』

声が震える、目が揺らぐ…
これじゃあまるで私がやったみたいじゃない



煉「…全て舞香から聞いた



A、俺は君を見損なったぞ」


『…は、』


見損なった？誰が誰を？
そもそも私師範から何も聞かれてない


師範も天元たちみたいに舞香のことだけを信じて
それ以外は全て私のせいにするの…？

……違う、師範はそんな人じゃない
誰よりも私と向き合ってくれて、誰よりも真剣に私をここまで育ててくれた


私の口から今起きている現状を全て話せばきっと分かってくれる

私の話にも耳を傾けてくれるはず…！




『師範！聞いてください！！実はこの女が──っっ！』

そう私が言い終える前にパンッ！と乾いた音が響き渡る





…私、叩かれ、た？師範に？

『し、師範…？』

煉「…言いがかりを言うのはよせ！
自分の行いを反省し、悔いて改めろ！！」




…耐えろ…耐えるんだ




ここで怒りに身を任せて刀を抜いてはいけない

どれだけ悲しかろうと決して涙を見せてはいけない

…全ては巡り巡って自分のために、皆のためになる



私は何も悪くない…けど謝ればこの場は収まる





『…身に覚えはありませんが、不快にしてしまったのなら謝ります』

ザッと頭を地面につけ、舞香の前で土下座をする


さすがにここまでやると思っていなかったのか、
師範を含める柱たちも相当驚いていたようだった


……でも、見えていなくてもわかる
ただ1人、舞香だけは口角を上げ私を上から見下ろしていた





……きっと、もう私の味方はいないんだね



Aの頬を流れた一筋の涙は乾いた風と共に消えていった

拾弐→←拾

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す