銀魂 【不死蝶の舞姫】3

第百三十三訓 ページ35

Aside



「全員無傷で帰れる保証なんて何処にもないのに…もし誰かが怪我でもしたら、私」



戦場は何が起きてもおかしくない場所で、大切な人が、一瞬でいなくなってしまう可能性だって…。
──私が一番、戦場の恐ろしさを知っているから



「──…っ」



無意識に握り拳に力が入る。
もし誰か一人でも、私の大切な人が傷つく事があれば私はアイツを…



近藤「Aちゃんは優しいな」



後頭部にかかった重みと暖かさに見上げると近藤さんが眉を下げて笑っていた。そして、ぽんぽんっと私の頭を撫でる。




近藤「俺も大切な奴らが傷付くのは耐えられんよ。だからキミの気持ちは凄く理解できる」




私を見つめる真っ直ぐな曇りのない瞳。
近藤さんは優しい声で諭すように、言葉を続けた。



近藤「でもな？俺たちは幕府に拾われた身なんだ。…だから、幕府がいなければ今の俺達はない。恩に報い忠義を果たすは武士の
本懐(ほんかい)！真選組の剣は"幕府を護る為にある"と俺は思ってる」




真選組が幕府に拾われた身なのは私が入隊するずっと前の話しだと、来たばかりの時に近藤さんから直接聞いている。どこまでも真っ直ぐで義理堅い人だから、彼が「恩を返したい」そう思っていることも…理解できる。

　


近藤「目の前で命狙われてる奴がいたら"いい奴"だろーが"悪い奴"だろーが手ェ差し伸べる。そんな人間でありたいと思うし、真選組の奴らもそうあって欲しい」




「Aちゃんが納得できる事を俺は少しでも言えたか？」と笑った近藤さん。近藤さんに、お父さんの面影が一瞬重なって



──「誰かが困っていた時は助けてあげなさい。手を…差し伸べてあげてくださいね」


優しく私の頭を撫でるお父さん
お父さんに言われて笑顔で頷いた幼い頃の私。
思い出して、胸が熱くなる



近藤「あ"！ちょっと勝手に出歩かんでください！ちょっとォォォォ！！」



一人で出歩く禽夜(蛙)を見つけた近藤さんは、屋敷に向かって走りだした。

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