8.嫉妬 ページ9
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ゾムくんと別れた後、女の子と仲良く話している大くんとばったり出会う。大くんだけじゃなく、女の子の方も顔を引きつっている。
あぁ、この子遊び人で有名な三年の…。
「大くん、朝から楽しそうね」
「うぇっ！？ ま、まぁな…！！」
「貴女も。遊び相手がいなくなったから大くんにしたのね」
「えっ、と…、」
目を泳がせている彼女は、何を隠そうゾムくんとも遊んだ(意味深)ことがある。ギャルちゃんが広めてくれたおかげで、そういうこともなくなったけど。
「大丈夫よ、安心して。ゾムくんに手を出さなきゃ何もしないから」と、冷や汗をかいている彼女の手に私の手をするすると絡めてそう言えば、パッと手を離して拒否反応を示された。
「…て、ていうか！ おま……、A、今日髪どうしたん。めっちゃ汚いで。結び直さへんの…？」
「…可愛いでしょ」
そう言うと、「はぁ？」と言いたげな顔をされたがどうでもいい。私だけが分かっていればいいんだから。
「______……でね、今日の朝、ゾムくんが髪結んでくれたの」
「あぁ、やから少し歪な感じなんか。良かったやん」
「ふふっ、でしょう？」
図書委員だから昼休みに本の整理をしていると、マンちゃんがソーダを持って手伝いに来てくれた。
私は背が平均的だから、高い棚には手が届かない。だから手伝ってくれるのは正直言って助かるのだ。けれど、朝のあの出来事を考えれば絶対ゾムくんはここにくる。
「あのさ、マンちゃ…__！」
「うおっと、大丈夫？」
貧血でふらっとよろけた私を、マンちゃんが抱きしめる形で支えてくれる。私と違う男の人の体格に、ゾムくんもきっとこうなんだろうかと考えた。
「大丈夫よ。ありがとう」
「…って、顔色悪いで。大丈夫？」
マンちゃんは姿勢を低くして私の顔を覗き込む。その時、誰かの走り抜けるような足音が聞こえたが特に気にしなかった。
そして迎えた放課後。
「先輩行きましょ」
「ゾムくん？ うわぁっ、！」
私はゾムくんに連れ去られた。
何も言わず、ただ強く握られた手。強すぎて手が痛いくらい。けれどその強さの理由はきっと、いつもよりも深い嫉妬だ。
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