1.運命 ページ2
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窓ガラスが割れてその破片が星屑のようにキラキラと輝いたあの瞬間、やっと彼に出会えた喜びで胸がはちきれそうだった。
というのも、予定ではもう少し後に出会う事になっていて、こうして運命的に会えた奇跡に私は神に感謝すべきだろう。
あまりの予想外の出来事に思わず腰を抜かした私に貸してくれた熱を帯びた彼の手。私を見て恥ずかしそうにそう言った彼の様子。約一年間程彼を見てきた私だ。
案外顔に出やすいということを把握していたから、林檎色の顔を見て確信を得た。詰まるところ、彼は私に恋をしたのだ。
「…ふふっ、ふふふっ。あは、あはははは！！！」
これで彼を私の手に収めることが出来る。
その事だけで頭がいっぱいだった。
「ほんまにお前らは…！ 仮にも生徒会やねんぞ！ それが分かっとんのか！」
図書室も閉館時間になり、鍵を閉めて職員室に行こうとしていた時の事だ。職員室に行くには必然的に生徒会室の前を通る事になる。
扉越しでも聞こえるトントンくんの怒りのこもった声に、これは彼が怒られているとすぐ分かった。
バレないようにこっそり耳を立てて話を聞いてみる。彼の事だ、きっと話を逸らす為にも私の事をトントンくんに聞くだろう。そう考えていると彼が私の事をトントンに聞き出して、私の事を知った彼は嬉しそうな声で「ありがとな、トントン！」なんて言う。
「…早く来ないかなぁ」
図書室の鍵をくるくると回しながら職員室に向かった。
「エル」
下駄箱で靴を履き替えていると、後ろからよく聞き慣れた重低音の声が私を呼んだ。振り返るとそこにはグルッペンが立っている。
グルッペンは私を見るなり「家まで送ろう」なんて言うものだから、仕方ないので素直に送られる事にしておいた。
未だに落ちない陽が影を伸ばしている静かな時間。道の途中にあった自販機でサイダーを二本買ったグルッペンは、そのうちの一本を私に差し出して「やる」とだけ言った。
「ありがとう」
「さっきゾムがお前の事を聞いてきたぞ。…なんて言わなくても既に知ってるんだろ？」
「そんな無粋な事聞かないで。答えは知っている癖に」
「ククッ、いいじゃないか。…お前の計画とは違った物語が進み始めたがどうだ」
「計画じゃなくて予定よ。でもまぁ、そうね…。今回の事ではっきりした事があるの」
「何だ？」
夕陽に背を向けてグルッペンにこう言う。
「私と彼が出会ったのは絶対的な運命って事」
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