5.不純 ページ6
.
生徒会の皆は彼女の存在を以前から知っていたようで、仲良さそうに話したり冗談を言い合ったりしていた。そんな中、鬱先生は彼女がいるからなのか、いつもよりやる気を無くしている。
小声で鬱先生に話しかけると、魂が抜け落ちたような返事が返ってきた。
「…なんや」
「大先生が女子にお前って珍しいなって。知り合いなん？」
そう聞くと、はぁと溜息をついて少し刺々しく「俺とアイツ従姉妹やねん」と言った。彼女と従姉妹である事が嫌なのか、不満そうな顔をする。
「従姉妹…。大先生と先輩が？」
「せやで」
「でも何でそんなに嫌そうにしてんの？」
「ゾムさん、アイツの本性しらんやろ」
「本性って…」
「いいか、ゾムさん。アイツは周りが思っとるよりも“不純”やで」
不純。それは純粋・純真でないこと。
大先生との解釈違いに少し不満を覚える。親戚だからそんな風に言うんだ、と思った。彼女のキラキラと輝いた微笑みは、紛れもなく透き通った水のようだから。
「何てったってアイツは______」
「大くん」
大先生が彼女の事を詳しく話そうとすると、あの柔らかな声がそれを阻止する。
「少しお喋りが過ぎるんじゃない？」
いつもの柔らかな声だけれど、何故か大先生はすっかり怯えきっていた。それを見ていたトントンは「大先生、数学教えんで。こっち来ぃや」と呼びかける。
それに頭を縦にぶんぶん振って、急いでトントンの方に向かう大先生。と入れ替わるように、彼女が俺の横に座る。
「分からないところある？」
「えっ…と、古典の活用形んとこがちょっと…」
「あぁ。コツさえ掴めば簡単だよ。例えば……______」
そう言ってゆっくり丁寧に教えてくれる彼女に思わず見惚れてしまう。
唇の動き、香水じゃない別のいい匂い、露出された柔らかそうな腕。暑さのせいで、頭がクラクラする。頭の中は『彼女が欲しい』その言葉で一杯。
そう。このまま彼女の動く口を塞いで、柔らかそうな腕を掴んで、全部俺のものにしてしまえば。全部この暑さのせいにしてしまえば______。
「…って言う事なの。分かった？」
「！！」
その声にハッと我に帰り、さっきまでの邪な思考が吹っ飛ぶ。
「わ、わかりました！」
「良かった。他にも分からないところあったら…」
彼女がそう言いかけたところで、トントンが「そろそろ休憩するで」と言う。彼女はクスッと笑ってまた言い直す。
「他にも分からないところあったら聞いてね」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なゆり(プロフ) - カナzbさん» わー！！！ありがとうございます！！ 言い当てられて私自身ビックリしてるんですけど、テーマが『純粋な狂気』なんです（超小声）。これからも是非よろしくお願いします！ (2020年2月5日 16時) (
レス) id: fc164f5bf0 (このIDを非表示/違反報告)
カナzb - これ良いですね！題名に誘われたんですが、ちょっとヤンデレ感もあっての純粋っぽい恋愛。は？最高やないか。 これは良いですね、布教しときます。 (2020年2月5日 1時) (レス) id: a1a86ad9f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
