3.自覚 ページ4
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「あ、ゾムくん」
「…どうも」
数日後、二階の渡り廊下で彼女とばったり会った。少し濡れた髪とプールバックを見て、さっきの授業はプールだと分かった。
彼女から少し香るプール特有の塩素の匂いから、いろんな想像を掻き立てられる。そう例えば、彼女の水着姿だとか。健全な男子高校生の想像することなんて、大抵こういうもんだ。
「プールだったんすか？」
「うん、そう。塩素の匂い好きじゃないんだ。…匂う？」
「いや、そんな事ないですよ」
「良かった」
そう言って安堵の笑みを見せた彼女は、本当に塩素の匂いが好きじゃないらしい。かと言って、塩素の匂いが好きという人もあまりいない気がするけれど。
彼女はじゃあね、と手を振ってこの場を去っていく。
一言二言話しただけ、それなのにどうしてこんなに気分がいいんだろうか。そして、彼女の後ろ姿が可愛く、また愛おしく思えるのは何で何だろうか。
その答えは彼女と初めて出会った時から分かっている。
「…あー、全然喋られへん」
彼女とうまく話せない自分に自己嫌悪してしまった。
それから廊下で彼女とすれ違う事が多くなった。その時に、彼女と一言二言話して別れる。それだけで幸せになれる俺は、自分が思っているより案外単純かもしれない。
ある日、美術室に移動する時、ノートを運んでいる彼女を見かけた。
「せんぱ、」
手伝おうと彼女の方に行こうとすると、壁のせいで見えなかったマンちゃんが彼女よりも少し多くノートを持って隣を歩いていた。
楽しそうに談笑している二人を見てモヤモヤしていると、彼女は俺に気付いたのか「あ、ゾムくん！」と言って声をかけてくれる。それに次いでマンちゃんも「おぉ、ゾム」なんて言う。
「日直か何かですか？」
「うん、今日は私達。ゾムくんは移動教室？」
「はい。これから美術なんです」
「あれ、美術やったら大先生もやないん？」
「一個下の女の子と一緒に保健室行ったで」
「アイツ相変わらずやな…」
彼女が俺に話しかけてくれた事も、気付いてくれた事も嬉しかったが、未だにこのモヤモヤが取れずにいる。マンちゃんにそれを悟られると、後で根掘り葉掘り聞かれると思い何でもない振りをする。
ただその努力も虚しく散ることになる。
「…って“A”、そろそろ行かな次に間に合わん」
マンちゃんが彼女を名前呼びするのを聞いて、何処からかどす黒い感情が漏れ出した。
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なゆり(プロフ) - カナzbさん» わー！！！ありがとうございます！！ 言い当てられて私自身ビックリしてるんですけど、テーマが『純粋な狂気』なんです（超小声）。これからも是非よろしくお願いします！ (2020年2月5日 16時) (
レス) id: fc164f5bf0 (このIDを非表示/違反報告)
カナzb - これ良いですね！題名に誘われたんですが、ちょっとヤンデレ感もあっての純粋っぽい恋愛。は？最高やないか。 これは良いですね、布教しときます。 (2020年2月5日 1時) (レス) id: a1a86ad9f2 (このIDを非表示/違反報告)
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