其ノ肆拾肆 大嫌いな悪鬼 ページ45
あの後、その村の喰われた人々を弔い、錆兎と真菰の傷を癒した後、その場を去った。
傷を癒した力について伊黒さんに訊かれたので、移動しながら説明した。
すると、驚いたような空気を出した。
そういえば、精霊遣いだと云う事を詳しく話して無かったな。
今度他の三人にも伝えておかなければ。
そして次に着いたのは、小さな里。
其処に入った瞬間、血の匂いが私達を包んだ。
辺りには貪り喰われたような形で亡くなっている人が沢山居て、体中の血の気が失せた。
「…遅かったか」
「…」
伊黒さんの言葉を返すことが出来なかった。
錆兎と真菰から憤りと哀しみの空気を受けながら、私は気持ちを切り替えるつもりで、空気を感じ取るために目を瞑った。
「今回、悪鬼は三人、みたいです。左側に一人、右側に一人、奥の方に一人だと思います」
「分かるのか」
「なんとなく、ですけど。空気が濁っているので」
「…そうか」
少し眉を顰めた伊黒さんだったが、三方向に分かれようと言って左側へと向かって行った。
私は、錆兎と真菰に右側へ行くように言って、奥に居る悪鬼を斬るべく走った。
「酷い…」
其処は地面の色が分からなくなってしまうくらい一面真っ赤だった。
そして、その上に横たわっているのは何人もの若い人達。
今まで、何人もの悪鬼を斬ってきた。
けれど、此処まで酷く人を喰う悪鬼を見たのは初めてかもしれなかった。
「貴方が、喰ったの…?」
目の前に居る悪鬼に訊ねる。
彼から発されるのは、濁った気味の悪い愉快そうな空気だった。
「そうさ。俺が喰った。若い人間は喰うと美味いからなぁ!」
嗚呼、腹立たしい。
人の命は尊いものなのに。
未来を繋いで幸せに生きていく筈だった人達の尊い命を簡単に奪ってしまった。
「どうして、そんなに愉しそうなの…?」
「どうして?そんなの、簡単さ!腹が減ったら飯を食うだろ?それと同じ!腹が減ったら、人間を喰う!ただそれだけだ!」
それなのに、本人は悪びれもせず、愉快そうに笑い、まだ物足りなさそうに私を見ている。
嗚呼、許せない。
「もういい。答えてくれてありがとう」
伊黒さん。
私も、尊い人命を自己満足の為に奪う悪鬼は、大嫌いですよ。
「私が貴方を斬る」
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抹茶うさぎ@琥珀(プロフ) - あやめさん» 嬉しいです!1ヶ月近く更新出来ずにすみません…。早く新しい話を読んで頂けるように頑張ります!コメントありがとうございました! (2020年5月30日 22時) (レス) id: 00cd6a155e (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - とても面白かったです!これからもがんばってください!更新お願いします!!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶うさぎ@琥珀(プロフ) - (=゚ω゚=)にゃあ@サブ垢さん» はじめまして!型の提案ありがとうございます!とても良いですね!是非採用させてください!説明もつけて頂きありがとうございます! (2020年4月15日 8時) (レス) id: 606e94aca2 (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ@サブ垢(プロフ) - はじめまして。型のことですが、「巻雲・天波虹」けんうん、あまはにじ というのはどうでしょう?説明半円を描くように何回も切る。それは相手には遅く見えるが、実際はものすごい勢いで切りつけている…的な。 (2020年4月15日 2時) (レス) id: ed1bcccac4 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶うさぎ@琥珀(プロフ) - チョコさん» 了解です!返信ありがとうございます! (2020年3月13日 11時) (レス) id: 00cd6a155e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鷹麦 | 作成日時:2019年12月21日 19時