其ノ参拾肆 花柱を救った理由 ページ35
「どういたしまして。でも、私の治療はあくまで目を覚まさせる為の手助けです。カナエさんが助かった理由は、貴女方の姉妹愛なんですよ」
そう言って微笑むと、三人はきょとんとした表情になった。
「しのぶさんの傷の治療をすること、カナヲの勇気を出して話しかけたこと、通る度に寄ってカナエさんに触れること」
「「!」」
二人は驚いたように手拭いを外して此方を見た。
以前、此処を訪れた時、カナヲが少し部屋の前で迷った後、部屋に入って行ったのが見えたのだ。
最近は空気ばかり集中し過ぎて忘れていたけれど、少し耳の良い私は、中からカナヲが何か言っているのが微かに聞こえた。
そして、毎日蝶屋敷に通ううちに、しのぶさんとカナヲは必ず部屋の前を通ると一度中へ入って、少ししたら出て行くのを知った。
どうやら、本人達は私が知っていることを知らなかったようだけれど。
そして、やっぱり一番の理由は…
「そして、カナエさん、貴女の二人への思いが自分自身を救ったんですよ」
「私の…思い?」
「はい。カナエさんが二人と一緒に居たいっていう気持ちが強かったから、今生きているんです」
そう。
精神干渉した時に感じた、優しい、愛おしさを含んだ空気。
それがあったから、私は負のエネルギーを変えることが出来た。
もし無かったら、私も百合さんもお手上げだったかもしれなかった。
カナエさんは納得したようにふっと笑って、そうだったのねと呟いた。
「しのぶ、カナヲ。ありがとう」
すると、二人は一瞬ぽかんとした後、目尻に涙が溜まり、それはぽろぽろと頬を伝って落ちていった。
「あらあら…」
そう言って、自分の冷えた手拭いを二人の目に優しく当てているカナエさんは愛おしそうに微笑んでいた。
その夜は、初めて六人で一緒に夜ご飯を食べて、蝶屋敷に泊めてもらった。
久々に大人数で楽しい夜を過ごせて、嬉しかった。
〈余談〉
in蝶屋敷の客人用寝室
「どうしちゃったの、錆兎」
「何故俺は、女性の中にいたんだ…?!」
六人のうち一人だけ男の子の錆兎が、布団の上で頭を抱えている。
もう空気そのものが混乱しちゃってる。
そんな彼を隣で真菰がつんつんと頬を突いている。
…可愛い。
「それは…仕方ないよね、A」
「そうだね。…まあ、いいんじゃない?紅一点ならぬ、白一点」
「「上手くない」」
「知ってるよ!息揃えないで?!」
そう言った後、三人で同時に吹き出した。
やっぱりこの時間が好き。
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抹茶うさぎ@琥珀(プロフ) - あやめさん» 嬉しいです!1ヶ月近く更新出来ずにすみません…。早く新しい話を読んで頂けるように頑張ります!コメントありがとうございました! (2020年5月30日 22時) (レス) id: 00cd6a155e (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - とても面白かったです!これからもがんばってください!更新お願いします!!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶うさぎ@琥珀(プロフ) - (=゚ω゚=)にゃあ@サブ垢さん» はじめまして!型の提案ありがとうございます!とても良いですね!是非採用させてください!説明もつけて頂きありがとうございます! (2020年4月15日 8時) (レス) id: 606e94aca2 (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ@サブ垢(プロフ) - はじめまして。型のことですが、「巻雲・天波虹」けんうん、あまはにじ というのはどうでしょう?説明半円を描くように何回も切る。それは相手には遅く見えるが、実際はものすごい勢いで切りつけている…的な。 (2020年4月15日 2時) (レス) id: ed1bcccac4 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶うさぎ@琥珀(プロフ) - チョコさん» 了解です!返信ありがとうございます! (2020年3月13日 11時) (レス) id: 00cd6a155e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鷹麦 | 作成日時:2019年12月21日 19時