カイロ・レンの妹 (ページ6)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:42,228 hit

看病？ページ6

記憶が正しかったら、先いた星でレンに捕まってしまった。

　さあ、どうくる？どんなに恐ろしい拷問が待っていようが私はきっとここから逃げられる。

　レンに負けてたまるか！

　意を決して目を開くと、

　体を預けているのは拷問の椅子ではなく、

　一人用のベッドだった。

　
　「目が覚めたのか」

　コップを持っているカイロ・レンが目の前に現れた。今回はマスクをしていない。

　肩まで伸びた黒髪、宇宙を連想させる黒い目。

　この人を見て、胸のどこかで懐かしすぎて思わず涙ぐむ自分がいた。

　「あんた...！」

　起き上がろうとすると、頭に激痛が走り再びベッドに倒れた。

　だめだ、力が全く湧いてこない...

　「そんな急に起きてはだめだ」レンの目に幾らか暖かみが増し、私の背中に手を置いてゆっくり起こした。

　「これを飲むと楽になる」と言いながら少しずつ私にコップの中身を飲ませた。

　敵に対する口調に相応しくない、静かで穏やかな声音だった。

　「ここは俺の寝室、俺は床で寝るからAは上で寝て構わない」

　この人から全く殺意が感じてこない。むしろ、私のことを愛しんでいるようである。

　私が何も言わないのを見て、レンは静かに続ける。

　「先程の墜落事故による傷害と過度な運動、ゆっくり休むといいだろう」

　レンが腕を伸ばしてくる。無力な私はすぐ目を瞑った。

　私の額に手を当てただけだった。

　

　

　

　「どうして？」

　頭の整理が追いつかない。敵同士なのにこんなことするはずがない、レンならなおさらだ。

　レンは端正な顔をこちらに向けて、私を面白がるように答えた。

　「兄妹なら当然のことだろ」

　雷のような衝撃が頭をうたれるように感じた。
　
　先まで怒りに隠された事実が思い出される。

　

　そう、

　
　レンは私の兄、だった。

　3秒ほどして、ショートした頭が治った私は

　「あんたはただのベンの皮を被った悪人！」と辛辣な口調でレンに食ってかかった。

　これを聞いてレンは少しショックを受けたような表情をしたけど、なんともなかったように私に少し微笑みかけた。

　「これから医療ロボットを呼んでくるから、ここでいい子にしてろ」と言いながら、急ぎ足で部屋の外へ出た。

　

　いい子にしてろだって？

　...私は何を見ているのだ。

　夢なら早く覚めて欲しい。