カイロ・レンの妹 (ページ29)

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帰還ページ29

「まだ？」

　「もうそろそろ起きてくると思うわ」

　朦朧としている意識の中に、ヒソヒソ声が聞こえる。

　目を開けると、声の主達は驚いてわっとなった。

　「Aが目を覚ましたぞ！」

　聴き慣れたポーの声が走り去る音と遠くなっていく。次にレイが心配そうに私の額を撫でた。

　「レイ...」

　「ここどこかわかる？」

　この老朽した貨物室は分からないわけない、懐かしすぎるほどだ。

　「ファルコン...」
　

　
　ずんぐりした鳥達を除いてだけど。

　
　次にチューイの暖かい毛に顔を埋める。疲れ入れるが喜びに満ちたレジスタンスの面々とも挨拶を交わした。

　
　マスタールークのおかげで、全員無事脱出できたのだ。
　

　人だかりの背後にある人影に気付いて、私はソファから下に降りた。

　「母さん！」

　駆け寄る前に母は私を胸に引き寄せた。

「お帰りなさい、私のバカ娘」

　
　その抱擁は驚くほど優しかった。

　目尻に涙が盛り上がるのを感じたが私は止めなかった。

　感情が落ち着いた後、私は気になったことを母に言った。

　

　「...ルークおじさんは亡くなったよね？」

　「残り少ない命であなたを私のところに送ったの。フォースを通じて、Aの面倒を見るようにと言われたわ」

　
　恩師を懐かしむ暇もなく、師は安らかに、そして悔いなくフォースの中に溶け込んだのか。

　
　「...あの子の話はレイから聞いたわ」

　突如母が言いづらそうに口を開いた。

　
　内心ドキッとした。

　
　何をいうのだろう。

　「緊張しないでよ」

　母は笑って私に理解させる目を向けた。

　「あなた達がそれで良いと言うなら、私は止めるつもりないわ。元々気づいていたし...」

　母の話が終わらないうちに、士官の一人が次の指示を聞くため母を呼んだ。

　「また後でね」

　「う、うん」
　

　
　一人になった私は再びソファに横たわった。

　

　衝撃が収まらない。

　両親は崩壊した兄妹の関係を繕おうともしない。むしろそれを認めていることに私は唖然とした。

　すると思考を断ち切るように、私のフォースが震え始めた。

　
　一瞬誰かが隣にいるのかと思った。

　
　長身で、肩まで伸びた黒い髪の男が静かに座っている。
　

　男もびっくりした表情を浮かべてしっかり私を見た。

　「A」

　その声を耳にした途端、私はすぐフォースを閉じた。