カイロ・レンの妹 (ページ17)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:42,226 hit

彼の持つ空気は私を安心させるページ17

私が後ろに下がったのを見て、レンは曖昧な表情を浮かべた。

　下がった分レンが前に進む。後ろを確認しないと落ちていきそうだ。

　「どうして私をしつこく追いかけるわけ？」

　「頼みがあるんだ」

　だんだんレンは私の一歩先に近づいた、もうこれ以上下がれない。

　少しの悪意もなく、まるで何かを訴えて切なげな目で私を見据えた。

　その強い決心に気負いされそうで、私は先に目を逸らした。

　「古いもの去るべき時が来た。A、俺と手を組もう。それで戦争が終わり、俺たちで新しい銀河を作る」

　そう言いながら、レンは手を差し伸べてきた。

　私はさっと手を上げると、レンの顔に驚きと感謝が入り混じって、初めて陽が射したみたいだ。

　だけど、私は残酷にもレンの手を叩いたのだ。

　「あんたと手を組むなら、死ぬ方がマシだわ」

　成り行きを見ていたトルーパーたちが一斉にブラスターを構えると、レンは振り返って怒鳴った。

　「銃を下ろせ！」

　同時に私は搭乗口から宇宙へ身を投げた。

　

　無重力に身を任せて、私は広大な宇宙に吸い込まれていった。

　
　ちっぽけで、弱い人間。

　改めて、自分の孤独さに気づいた。

　小さい頃、両親は組織を率いるのに忙しくしていたから、私の世話をするのはいつもベンだった。

　兄さんが消えてから私は一人になった。

　独り立ちできるように、私はなんでも頑張ってやりこなせた。

　大人になっても、父は消息不明になり、母は戦争の指揮をとっていた。

　私はまだ一人ぼっちだ。

　ここで一人で死ぬのは怖いよ。

　後悔先に立たず。無謀な行動で命を落としたら、今度こそ母から許してもらえなくなるだろう。

　

　一人で悲しみに打ちひしがれていると、ふと誰かの腕に収まった気がした。

　目を開けると、私の後を追って自ら宇宙に飛び込んだレンだった。

　レンの腕が背中に回り、強く抱きしめてくる。

　頬がレンの胸に当たって、人の体温と規律良い鼓動が伝わってくる。

　「怖くない」

　抵抗する私を安心させようと、レンは柔らかな声で耳元に囁いてきた。

　「Aは孤独じゃない。俺がついてる」

　「あ、」

　自分のか細い声が聞こえる。

　「ありがとう...」

　

　いつしか私もレンを抱き返した。

　空中に浮かぶ涙の粒々を、私はレンの髪を通して見上げた。