【ハリポタ】胡蝶の夢を見る4 (ページ23)

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「あれ、レーヴが泣いてる。」

「なになに？」

「おい、セドリック、何泣かせてるんだよ。」

周りも私に気がついて、冗談を飛ばしてくる人もいた。
時にはそんな声に助かる時もあるんだろうが、今の私は放っておいて欲しかった。

「やめろよ、揶揄うな。」

セドリックが私を庇ってそう言った。

「もしかして別れ話か。」

「僕たちは…別に、付き合ってないよ。」

次々に人が寄ってくる。
変な冗談を間に受けた人たちがいるようだ。

「ああ、もう違うって言ってるだろ。Aおいで、僕の部屋で話そう。」

セドリックは集まってきた人たちを追い払うと、私の手を引いて男子寮の方へと向かった。

「…え？」

「多分、みんな外出してるはずだ。」

セドリックは私が部屋に入ることになんの躊躇いもなく進んでいった。…男子寮なんて勿論入ったことがないが、部屋の間取りなどは女子の方と大差ないようだ。私は引っ張られるまま彼の寝室まで来る。

「…よかった、みんな出てるみたいだな。ここなら落ち着いて話せるかい？」

いつも通りのセドリックが、部屋の隅で荷物置きになっていた椅子を引っ張り出してくる。

「ここに座って。」

すっかり涙が引っ込んでしまった私が椅子に座ると、今度はジュースを持ってきてくれた。

「何か飲んだ方がいいよ。今これしかないんだ。」

「…ありがとう。」

「どこか痛いわけじゃないんだろう？頭とか…医務室に行くかい？」

親切にされると、今度こそ収まったと思った涙が次々に出てくる。

「ううん、…嫌なものを見ちゃっただけ。」

“穢れた血”
ドラコの声で脳内に再生される。
嫌悪感と恨み嫉みの感情も。

「…セドリックは、純血とそうじゃない人たちについてどう思う？」

彼は少し言葉を詰まらせた。
言いにくいことだったというより、予想外の質問だったのだろう。

「うーん…同じだよ。純血も混血も何も変わらない。それにマグルの発明もすごいよ、ちょうどマグル学の授業で習ったんだけど…」

セドリックの話はなんの悪意も感じず、声は穏やかで、すごく落ち着いた。彼は話しながらハンカチを持ってきてくれる。

「もしかして…純血主義の奴らに何か言われた？」

「ううん…私の友達が私の友達に…“穢れた血”って呼ばれてたのを見ちゃって…」

「ああ…それはよくない。」

「…私はみんなで仲良くしたかった。だけど無理かもしれないって思って…」

絶望感ってこういうことを言うのだろうか。

ドラコに会ったら、どんな顔をすればいいんだろう。どんな声をかければいいんだろう。私のことはどう思ってるの？

もう前みたいに話しかけることも笑うことも出来そうにない。