【ハリポタ】胡蝶の夢を見る9 (ページ8)

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脳内にトレローニー先生の声が響く。

“ グリム…死神犬ですよ！”

…

湖の側、木の影に蹲っていたのは真っ黒な犬だった。
犬は、真っ直ぐに背を伸ばして座っていた。
大人しく礼儀正しい子… 以前、家の庭に出てきた子とよく似ている。

「…」

ギロリと大きな瞳がこっちを見ていた。

「ねえ、まさかとは思うけど、あの時の子？」

毛並み、痩せ具合…そして何より、この何かを訴えているような大きな瞳。あの時の犬によく似ている。

「うーん、見れば見るほど、あの時の子にそっくり。」

もしかしてここまで追いかけて来たのだろうか？
私が飼ってあげたいって言ったから？
ホグワーツには連れて行けないかもと言ったから？

真っ黒な梟のアンバーと、真っ黒な大型犬。
ただの偶然かもしれないけど、なんだか他人のようには思えない。

私は恐る恐る犬に手を伸ばして撫でてみる。
犬はとても痩せ細っていて、疲れているように見えた。

「ご飯食べれてる？もうすぐ夕食だから、何か持ってきてあげるね。ホグワーツのご飯美味しいんだよ。」

優しく撫でてやると、犬は気持ちよさそうに目を細めた。
ふさふさの毛並みは、撫でているこっち気持ちがいい。

「何か名前をつけてあげようかな。」

私はしばらく考え込む。

「大きいからジャンボ…黒いからブラック…」

大人しく撫でられていた犬がびくりと体を飛び上がらせる。

「あ…ブラック気に入った？」

犬はじっとこちらを見つめていた。

「じゃあブラックにしよう、おいでブラック。」

私はブラックの体を抱き寄せる。
ブラックは少し抵抗していたけれど、害を与えられるわけじゃないと分かって安心したらしい。

私が撫で回すのを受け入れて、じっとしていた。

……

頬を舐められるような感覚で飛び起きる。

「またジョージ…！？」

…

私の脇にいたブラックがびくりと固まっている。

「あ、嘘、寝ちゃってた…？ご、ごめんブラック…またジョージにキスされたのかと思って……」

辺りが暗いのに気が付いて空を見上げると、とっぷりと日が暮れて、すっかり夜になっていた。

サッと嫌な予感がする。

「待って今何時だろう。」

鞄にくくりつけていた懐中時計を確認すると、消灯時間目前。

「……うそ、やばい。なんで…！もしかして起こしてくれた？ありがとね、ブラック。」

慌てて荷物を拾い上げる。

「というか夕食食べ損ねちゃった…ごめん、ブラック明日の朝まで我慢できそう？」

ブラックは小さく吠えた。
頷いているみたいだ。

「明日もまた来るから待っててね。」

私は急いで来た道を振り返る。
背後ではブラックが心配そうにこちらを見ていた。