【ハリポタ】胡蝶の夢を見る9 (ページ37)

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食べても減る気配のないご馳走を前に、私の頭には先ほど見かけたブラックのことでいっぱいになっていた。アーニーがスクリベンシャフト羽根ペン専門店で見つけたという新しい羽ペンの話をしているのを聞き流しながら、私はしばらく葛藤する。

もしかするとブラックは私が食べ物を届けてくれるのを待っているのかもしれない。お腹を空かせて辛い思いをしているのかも。そう考えると、この山のようなポークチョップを食べているのが申し訳なくなってくる。一切れだけでもあげられたら…しかし、ルーピン先生ともう犬に近づかないと約束してしまったし…

「……」

ゴースト達の余興が始まった頃、とうとう私はローストチキンのサンドウィッチをローブに隠し、トイレにでも行くふりをして大広間を抜け出した。……少し覗いて、ブラックの姿がなかったら帰ってこよう。それ以上の接触はしないし、これっきりにする…

無人の玄関ホールの扉を少し開いて外を見る。目を凝らして建物の影や低木の奥を見回した。ブラックの姿はなかった。引き返そうかと諦めかけた頃…

「……どうしたのA？」

背後から声をかけられ、私は大声をあげそうになったのを堪える。

｢ハ､ハンナ…｣

不安そうな様子のハンナだった。

「いったいどこに行くつもり？」

「いや…ちょっと気になって…」

疑わしそうに私を見ていたハンナの両目が突然パッと見開いた。

「ハンナ……？」

「あ……」

声が出ていないハンナだったが、次の瞬間、とてつもない悲鳴をあげた。

「ど、どうしたの？」

「A、ドアを閉めて！！」

私は言われるがままに慌てて扉を閉めた。
ハンナの声を聞きつけたのか、ちょうどセドリックが急いで駆けつけて来る。

「何があった？」

怯えた様子のハンナを見て、セドリックが聞いた。私は訳が分からずハンナを見る。ハンナはぎゅっと私の手を引いて、その場に座り込んだ。

「急にハンナが…ハンナ大丈夫？」

「先生を呼ぼうか？」

私とセドリックは訳が分からずハンナの様子を伺った。ハンナはやっとの思いで口を開くと、今にも消えそうな声で言葉を繋げる。

「今…Aの後ろに、人影が…」

「人影？」

もう一度扉を開けようとした私をハンナが必死で止める。
セドリックは首を傾げた。

「もしかしてディメンターか？」

「……そうね、うん…きっとそうだわ。」

ようやくハンナが落ち着いて、私たちは揃って大広間に戻った。ちょうど首無しニックの余興が大受けしたのか、生徒達の歓声で盛り上がっているところだった。

「ハンナ、本当に大丈夫？」

もう一度声をかけると、まだ顔色の悪いハンナがコクンと頷くだけだった。