【ハリポタ】胡蝶の夢を見る9 (ページ28)

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ハリーは一瞬迷った後、首を横に振った。
ルーピン先生にはただでさえ臆病者だと思われてる…これ以上そう思われたくなかった。

「心配事があるのかい？」

しかしハリーの考えていたことは顔に現れていたらしい…

「いいえ…」

ハリーは一度首を横に振ったが、一息ついて正直に話した。

「はい…あります。先生、あの日のことを覚えていますか？」

ハリーがまね妖怪と戦った日のこと。

(ルーピン先生は僕に戦わせてくれなかった…)

ハリーはそう思っていた。それをハリーが打ち明けると、ルーピンは驚き、なんでもないように言った。

「ハリー、言わなくても分かることだと思っていたが…君がまね妖怪に立ち向かったらヴォルデモート卿の姿になるだろうと思ったんだよ。」

ハリーは予想もしてない答えに目を見開いた。その上、彼はヴォルデモートの名前を口にしたのだ。

「ヴォルデモートの姿が現れれば…みんなが恐怖にかられると思ってね。しかし…感心したよ。君が最も恐れているものは恐怖そのものだ。とても賢明なことだよ。」

ハリーはなんと言ってよいか分からなかった。
返事をする代わりに紅茶をまた一口飲んだ。

「…ああそうだ、いいものがある。ちょうどお菓子をもらってね。」

ルーピンは机の引き出しから紙袋を取り出す。ハリーにはそれに見覚えがあった。すぐにそれが、自分のポケットのものと全く同じだと気付いてドキリとした。

「それって、Aの…？」

「ああ、よく分かったね。もしかして君も貰ったのかい？」

ハリーは再びなんと言っていいか分からなくなった。てっきりAは、自分だけのために用意したと思っていたのだ。ハリーは咄嗟に紙袋を確認したが、ルーピンの方にはメッセージもイラストもなかった。

ハリーは少しだけほっとして、ポケットの上から自分の貰ったクッキーに触れた。

「私にもわざわざ分けてくれてね…これが紅茶によく合うんだ。」

Aはクッキーを作りすぎて…お世話になってる先生達にも分けたらしい。最初は僕のために作ったんだ…ハリーはそう自分に言い聞かせた。

「ハリー、Aがボガートの前に立った時のことを覚えているかい？」

ルーピンに聞かれハリーは頷いた。
ボガートはAの前で、ドロドロとした血液の雫に変身したのだ。Aはボガートを見た時、真っ青になっていた。しかし同時に、腑に落ちたような表情を浮かべていた。

ただの赤い塊に、誰もが首を傾げた。
そして皆は単純に血が苦手なんだろうと言った。つい魔法動物学で大怪我をしたばかりだし…

しかし、彼女から“レーヴ”の話を聞いていたハリーには、もう一つ候補に上がるものがあった。