【ハリポタ】胡蝶の夢を見る9 (ページ23)

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「ない…と思う。」

「そうか、運が良かったな。」

沈黙の中、私は包帯が巻かれた彼の腕を見た。
みんなもうすっかり治ってるはずだと言うし、実際そうなんだろう。

「ドラコこそ、腕大丈夫なの？」

「…大したことない。時々…そう“時々”、痛むだけだ…」

彼はバッと目を逸らし、バツが悪そうに言った。なんだかぎゅっと息が苦しくなる。彼に嘘を吐かれたから？それとも腕がまだ痛むふりをして何か企んでいるから？もしくはそれ以上踏み込めなくなったから？

「そっか、気をつけてね…」

やっと私はそれだけ告げて、ドラコの横を通り過ぎた。

「ああ、お前も少しは大人しく行動しろ。」

ドラコもそう吐いて、私とは反対の方向に…階段を降りていって行ってしまった。彼らの背中を眺めたあと、私は何も考えず、何も気にしないふりをして再び歩き始めた。

……

ついにハロウィーンがやって来た。
私たちが初めてホグズミードを訪れる日だ。

寮のみんなも朝からソワソワしていて、私もワクワクしながら大広間に向かった。しかし、ドラコたちががハリーを冷やかして遊んでいるのが見えて、一気に気分が落ち込む。

「居残りらしいな、ポッター？ホグワーツの外が怖いのかい？」

ドラコは、いまだにホグワーツ特急でハリーが気絶したことを持ち出しているらしかった。見た目は少し大人っぽくなったみたいだけど、中身はまだ幼稚なままらしい。

私はドラコ達を見ないように背を向けてハリーに声をかけた。

「ハリー、おはよう。」

ハリーはドラコを黙って睨んでいた。お互い仲良くするって言ってくれたのはなんだったんだろう。偽りでも平和だったあの一瞬の日々が恋しい…

ハリーの元に近寄ったことで、スリザリンの生徒たちも私に気が付いた。パンジーが背後から嬉々として叫んでいる。

「あら、Aじゃない！あなたはホグズミードじゃなく、マグルの街に帰った方がいいんじゃないかしら！」

そうして彼女は、私がこの前、呪文を失敗した時の真似をして馬鹿にしている。

「あんな簡単な呪文さえ出来ないなんて…ほんとおかしいわ。やっぱりあなたはマグルなのよ！ねえ、ドラコもそう思うでしょ？」

「ああ、そうした方がいいね。」

彼らのことは見なかったが、ドラコがにっこり笑って私たちを揶揄う様子が頭に浮かぶ。

「A、ハリー。あんな奴らは気にしないでいいよ。」

ロンがそう言って、私達の手を取った。背の高いロンはドラコたちの視線から私を庇い、すっかり彼らの視線をを遮ると、慰めの言葉をいくつも並べた。