【ハリポタ】胡蝶の夢を見る9 (ページ20)

今日:30 hit、昨日:144 hit、合計:18,035 hit

【7-10】ページ20

「えっと？」

階段の途中で立ち止まるフレッド。

「どうしたの？」

「見てわかるだろ？僕は手が塞がってる。」

「食べさせろってこと？今？」

クルックシャンクスを両手に抱えているフレッドは、そうだと言って頷いた。

「…しょうがないな。」

私はスキャバーズを腕に抱え、高さを合わせるために階段を一つ上がった。悔しいがそれでも身長は負けている。

「ほら口開けて。」

包みからクッキーを一枚取るとフレッドの口まで運ぶ。
嬉しそうにもぐもぐと口を動かすフレッド。

「うーん……」

「美味しい？」

「こりゃ、ハニーデュークスのお菓子とは違って…」

「あ、比べないでって言ったのに。」

そりゃ面白い物好きのフレッドには、素人が作った仕掛けのないただのクッキーよりも、魔法がかけられたキャンディやチョコレートの方がいいだろう。

「いや、これまで食べてきたお菓子の中でもダントツでうまい！」

「本当にそう思ってる？」

「ああ、もっと欲しいくらいだよ。まだある？」

「とりあえず今あるのはこれだけだけど…」

私がお菓子の包みを出して見せると、フレッドは私が返事をする前に手を伸ばしてそれを取った。

「全部貰ってもいいか？相棒にも食わせたい。」

「それはいいけど…手使えるじゃん。」

小脇に挟まれたクルックシャンクスは、早く降ろせとでも言うようにシャーシャーと唸っている。

「君にこんな才能があるなんて知らなかったな。」

再び歩き始めたフレッドを慌てて追いかけた。

「…まあ、お母さんからの受け売りだけどね。レシピがいいんだよ。」

フレッドは寮に着くまでの間に、さらにクッキーを頬張っていた。本当に気に入ってくれたみたい。

「あれ、フレッドとAじゃないか。」

ちょうどロンがグリフィンドール寮から出て来るところだった。彼はすぐに私の抱えているネズミを見て叫ぶ。

「スキャバーズ！どこに行ってたんだよ…！」

「クルックシャンクスに追いかけられてた。すっかり怯えちゃってるみたい。」

ブルブルと震えているネズミをロンに預ける。ロンは悪態をつきながらクルックシャンクスを睨んだ。うーん、どうしたらこの2匹が仲良くなるんだろう…

「じゃあ私はもう行くね。早く戻らないと…」

セドリックの話では私は先生から早く寮に戻るよう注意を受けているみたいだし。

「ごめん、こんな時間にここまで。」

ロンが申し訳なさそうに言った。

「大丈夫だよ、ペットが行方不明になったら心配でしょ。」

ロンとフレッドと別れ、私は急いで寮に戻った。