【ハリポタ】胡蝶の夢を見る9 (ページ18)

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トボトボと寮に向かっている途中、厨房の前を通りかかる。
ふと、芽キャベツを茹でている匂いを感じた。

朝食の準備だろうか。中を覗いてみると、しもべ妖精たちが夕食の片付けと明日の仕込みをしているようだった。鍋と鍋がぶつかる音を聞いていると、台所に立つ母の姿を思い出す。

「ねえ、少しお願いがあるんだけど…」

ドアを開け、顔を覗かせると、近くで床を拭いていたしもべ妖精に話しかける。

「はい、どうされましたか？」

パチクリと大きな瞳が一瞬驚きこちらを見上げる。

「厨房を少し…使ってもいいかな？」

「もちろんです。何か食材をお持ちしましょうか？」

母曰く、気分がスッキリしない時にはお菓子作りがピッタリだとか。私は謎の犬のことや実の両親のことを頭の中から追い払い、自室から持ってきたミントを使ってお菓子作りに熱中する。

採ったばかりのミントで作るミントアイスクリーム。バナナとミントの二種類のチョコチップクッキー。

「なんと素晴らしい！」

「よければ味見してくれないかな？」

手伝ってくれたしもべ妖精にそう頼むと、戸惑いながらも一つ口に運んでくれた。

「こんなに美味しいお菓子は食べたことがありません！」

ホグワーツの食事を任されているしもべ妖精がいるのだから間違いないだろう。

「もしよろしければ、こちらで保管しておきますよ。」

「ありがとう。」

どれも上手に出来上がって、しもべ妖精たちにも褒められて、確かにいいストレス解消になったみたいだ。上機嫌で厨房を出た。

「うん、才能あるかも。」

おやつにと持ち出してきたクッキーを齧り、自画自賛しながら歩いていると、廊下の向こうからものすごい勢いで何かが走って来るのが見えた。

「あれって、ロンのネズミ？」

確か名前はスキャバーズ。
ハーマイオニーのクルックシャンクス追いかけられて逃げ回ってるとか言ってたっけ。

私は正面からやって来るその毛玉を捕まえる。

「捕まえた、大丈夫？」

確かにブルブル震えて凄く怯えているようだ。
クルックシャンクスもどこかにいるのかな？

「ロンに返さなきゃ…でももう遅いし、明日でも良い？」

ネズミから返事はないが、私はスキャバーズを抱えてひとまず自分の寮に戻ることにした。

「クッキー食べる？私が作ったの…ミントは嫌だよね、バナナのクッキーはどう？」

ポケットからさっきのクッキーを取り出して、スキャバーズに与えてみる…その時、シャーと狂ったような鳴き声と共に、廊下の角から大きなオレンジ色の毛玉が飛び出してきた。

「あっクルックシャンクス…」

声をかける間もなく、私の抱えていたスキャバーズに向かって大きな猫が突進してきた。