あ.や.か.し.げ.い.む (ページ8)

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狂気に満ちた笑みを見せる椿の妖。
目はギラギラ光っていて、獲物を狩る野生動物のようだ。
刀が目の前で振られる。
私は後ろに飛んで回避、氷の棘を椿の妖を狙って生成した。
椿の妖はいとも簡単に避けると、手裏剣を投げる。

＿＿＿＿数が多すぎる。

ものの数秒で投擲されたとは思えない手裏剣の数。
避けるにも避けきれず、頬に赤い線が走った。
自分の身長より少し大きめの氷の盾を展開させ、手裏剣を受け止める。
隠れている間に右手に氷の鎌を作った。
氷の死神…この鎌を武器としていたらいつの間にか付けられた二つ名。
忌み名なんて二人で言っていたが、心の中では案外かっこいいなんて思っていた。
氷の盾を鎌で粉々にする。
氷の粉が目の前を真っ白にする。が、私はこれを狙っていた。
これは私の戦術だ。
相手がこの白い視界で動けることはほとんど無いだろう。
目を凝らす。
赤色の椿が不意に目に入る。
鎌をそこに目掛けて振るが、何も感覚が無い。
どこだどこだ…。
そう思って周りを見る。
その時、喉が熱くなった気がした。
込み上げる何か。思わず吐き出す。

｢血…？｣

声が上手く出ているかなんて大して気にならなかった。
白い氷の粉に不似合いな赤い液体。
喉から日本刀の先が出ている。
足から力が抜けて倒れ込む。
後ろを向くと、椿の妖が私を見下ろしていた。
ずるり、と日本刀を椿の妖は私の喉から抜く。
血がどくどくと流れるのが分かる。
もうだめだ。応急処置をしても間に合わない。
でも妖だ。きっと死にはしない。
そう思うとなんだかどうでも良くなって、ただただ氷がこのゲームで無事にいられることを祈った。
意識が闇に落ちる。