狂った時計 REN SHO II (ページ10)

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58.動揺ページ10

「A起きたん？」

ゆっくりと私に近付いてくる。

「めっちゃぐっすり眠っとったよな」

ふふっと笑って、私の髪を撫でる指。
私は、状況が把握出来てなくて。
考える力も失われるくらい衝撃。

『……廉くんがやった、の？』

「おん。そうやで」

何も悪いことをしてなさそうに答えられるから、
思わず動揺してしまう。

『……ちょ、っと
触らないでよ』

我に返る。
いきなり襲いかかった恐怖心。

思わず髪を撫でてる手を振り払ってしまった。

「…………ふざけんな」

私を見下ろす冷たい瞳。
明らかに怒ってるのが分かる。声のトーンもさっきより断然と低かった。

「………A、大人しくしといた方が
身のためやと思うで？ん？」

そう言われたって。

そんなこと言われたって。

冷静になれる訳ないでしょ。

今の私には判断力というものが欠けていた。
もう廉くんの顔色なんてうかがうことも出来なくて。

『っ、偉そうにしないでよ！早くこれ解放して！』

思わず、そう怒鳴ってしまった。

.

ピクっと上がる口角。

やばい、そう思った時にはもう遅くて。
頬に走る、鋭い痛み。

しばらく、ぼーっとしてからやっと理解する。

あぁ、私殴られたんだ。

「ふは、その顔そそる～。

でも

これ以上、俺を怒らせんといてな。
もっと酷いことするかもしれへんで？」

あははははっと反り返りながら愉快に笑う廉くん。

その姿は、狂気に満ち溢れていて、
少し彼のことを虚しく思ってしまった。

.

.

乱暴に閉められるドア。

何もかも無くて、何もかも聞こえない。
聞こえるとしたら、雑音くらい。

この何も無い部屋で独りぽつんとベッドの上。
だんだんこの状況に頭がついてきて、

訳分からなくなって、ぐちゃぐちゃになって。

声を押し殺しながら、
何時間経ったか分からないくらい泣いた。