狂った時計 REN SHO II (ページ8)

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56.断れないページ8

* * *

涙でぐしょぐしょの顔。痛む腰。

私の身体に残るあの感触。

廉くんのことは嫌いじゃない。
でも、私のハジメテは心の底から好きと思える人に捧げたかった。

隣を向くと、
スヤスヤと寝息を立てて寝ている廉くん。

ー『…………寂しかった』

思い出すあの言葉。

どういう意味だったの……？

* * *

携帯の時計を見ると、10時半を示していて。
妹から早く帰ってきてのメッセージ。

やばい、……早く帰らなきゃ。

ベッドからゆっくり起き上がると、
手首を掴まれて。

思わず肩がビクッと震えた。

「帰らんといて」

少し掠れた声。

『……ごめん、妹が心配してるから』

そう冷たく言い放し振り向くと、
廉くんと目が合う。

「……お願い。独りぼっちは嫌やねん…」

消え入るような声。

私の腕を掴んでる手の力は強まっていって、
下唇を噛む廉くん。

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『……分かった』

そんな顔されて、お願いって言われて。
断るなんてこと私には絶対に出来ない。

廉くんもゆっくり起き上がる。
絡まる瞳と瞳。

そのまま廉くんの胸へと寄せられて。

「…………A好きやで」

甘い声、と同時に唇が重なり合う。
「私も好き」って返事ができない自分が憎くて、情けなくて、馬鹿みたいで。

『……ごめんね』

廉くんには聞こえない声でそう呟いた。