狂った時計 REN SHO II (ページ13)

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59.迷いページ13

* * *

ガシャーン

部屋中に響き渡るその音に、私はやっぱりという気持ちを隠しきれなかった。

「うわ～、やっべえ！」

皿の割れるクラッシュ音の次に聞こえてきたのは、廉くんの焦った声。

私はとっさに廉くんの元へと行こうと思ったが、少しの間考えまたソファーに腰掛けた。

* * *

ー「そこ、座っといて」

家に帰ったあと、すぐに言われたその言葉。
｢…はぁーい｣と、小さく返事をしてゆっくりとソファに座った。

「あ、俺が来るまで絶対に動かんといてな？」

優しい声色とは裏腹に、目に映るのは尋常じゃないくらい気味の悪い顔。

気味の悪い顔、といっても別に廉くんの顔のパーツが気味悪いという訳では無い。
なんというか、雰囲気というものが気味悪いのだ。

目は細くなっているけれど何故か笑ってるように見えず、最大限に口角を上げているのに歯を見せて笑わない。
しかも、細くなった目は魚のように死んでいる。

やっぱり、無理だ。

廉くんの存在を再確認させられたような、そんな気になった。

* * *

あの顔を思い出すだけでゾッとする。
同時に吹き出る嫌な汗。

「ホンマ出来ひんー、なんやねんこれ」

「うわっ、危な！」

「っ、痛っ……」

ボソボソとキッチンから聞こえる不満の声。
その声が聞こえる度に、どうしても気になってしまう自分がいた。

性格上、一度気になったらもう終わりなのだ。
変なところで頑固とよく言われる。

「うわぁあ！やばっ、ちょ」

もう今の私には、さっきの廉くんの顔や言葉など
すっかり頭から抜けていた。