3歩先の背中に触れたい (ページ21)

今日:25 hit、昨日:0 hit、合計:80,279 hit

21 ページ21

コンコン。

部屋のノックに耳がピクリと反応する。

「A。俺だけど......。身体大丈夫？」

ノックの主はまさかのグクだった。
慌てて涙を拭って、出来るだけ普通の声を出す。

『大丈夫だよ！グク.....本当にありがとう』

「お前、部屋にいるって聞いたから心配で、少し話せない？」

少し戸惑いながらも扉を開けたのはただグクの顔が見たかったから。

「泣いてたの？」

扉を開ければ心配そうに顔を覗き込んでくるグク。
本当に久しぶりにグクと話してる気がする。

『身体は本当に大丈夫なの.....おかげさまで...本当にありがとう』

「本当に心臓止まるかと思ったよ。俺のも.....お前のも...」

『............うん』

つい涙声が混じってしまえば優しくグクがポンポンと背中をさすってくれる。

「怖かったよな、もう大丈夫だから」

久しぶりのグクの匂いが鼻を掠める。
きっとこの匂いが私は世界で一番好き。

『......すき』

「えっ」

背中をさすってた手がぴたりと止まる。

『私グクのことがずっとずっと好きだった。グクには彼女がいるのは分かってる、気持ちに応えてほしいなんて思ってないからっ、ただ死んじゃうって思った時すごい後悔したの。グクに好きって言ってないこと』

捲し立てるように、長年の思いが堰を切ったように溢れ出るように話した後グクの顔を見ると今まで見たことのない顔をしていた。

大きな目がいつよりもまん丸でポカンってしたような顔をした後、考え込むような深妙な顔をするから少し悲しくなった。

『ごめん、迷惑だったよね』

「そうじゃないっ、でも本当にびっくりしてる。お前の気持ちは嬉しいけど俺にはへウォンがいるから」

『うん、分かってる。ただ言いたかっただけなの、聞いてくれてありがとう』

それからグクは困ったような顔で私の頭を撫でて部屋を出ていった。
わかりきってた反応だった。
悲しいのは悲しいし、辛いには辛いけど、今まで秘めていた思いを伝えられて少しだけすっきりとした気がする。