【ぬら孫】 山吹少年の妖怪事情。 ≪第弐幕≫

幽霊　五十六人 ページ12

それからは、母さんは立ってるのもつらくなって床に臥せる毎日だった。

村に行っても僕に売ってくれるものはないから、

野山を駆け巡って、栄養にいいものを取ってきて、料理して……

僕の作った飯を母さんはおいしいって言ってくれて……

僕は浮かれてたんだ。

それからその年の秋に、ご飯も食べれないほど母さんの病気は悪くなった。

毎日熱で魘されて苦しそうで、
どうして母さんがこんな目に合うのかっていもしない神を恨んだこともあった。

どうして母さんは父さんのところに戻らないのかって思ったこともあった。

それでも、母さんには生きていてほしくて……


そしてあの日、満月の夜だった。

『ねえ、A、妾の最後のお願い、聞いてくれる？』

『聞く！なんでもするから！だから最後なんて言わないでよ！！』

乙女は上体を起こし、そんな乙女をAは支えるように抱きかかえる。

乙女はAの手を取り、か細い声で言った。

『ねえ、尊。その優しい手で、妾の胸を突き刺して……』

『…えっ……？』

『酷なことを願うのはわかってる。それでも、どうせ死ぬなら大切なやや子に殺されたい。』

力のない手で手を握られれば、何も言えなくなった。

『そして鯉伴様の元へ行って。鯉伴様とその家族を護って。
　あなたは強くて優しい、自慢のやや子だから……それだけは忘れないで……』



そして僕は何も話すことなく、母さんの胸を貫いた。

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