先生、対処法を！ ３【名探偵コナン】

対処法１３２ ページ41

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先輩は美人な人だったが、強い女性だった。

例えば佐藤刑事は美人だが、そういうのではなく、例えるならベル姉さまのような感じが近い。とにかく、強いのだ。

職場の時からは想像もつかないような、華々しい強さ。艶やかな美貌に寄ってくるような男の喉を片手でくすぐってあしらってそうな感じ。色恋で泣かされることのない、むしろ泣かせてそうな女性って感じ。まさしくベル姉さま。

そんな先輩が昔はぺーぺーだったというのだから、人生って分からない。


そんな経験って、一体どんなことになったら出会うのかしら。例えるならベル姉さんはバーボンのようなとびきりの男性がそばにいたって、そんな男の人を自分の人生に少しだけまぶされた粉砂糖くらいにしか思わないだろう。対して自分は逆立ちしたってそんなふうにはならない。どんな化学変化が起こったってちんちくりんはちんちくりんである。あ、言ってて悲しくなってきた……

これが遺伝子配列の敗北ってやつですか??

「別に、恋愛経験豊富になれなんて言ってないわよ」
『え』
「これはただの具体例。ぺーぺーだった私でも、恋で変わったっていうね」

考え込んじゃって、おバカな子ね。そう言って先輩がからから笑う。彼女のピアスがキラキラと揺れて、まぶたと同じ様に光った。

「あなたが社会人のマナーとしてお化粧してるのは偉いけれど、恋に恋して可愛くなりたいって渇望する女のコの気持ちは……それとはちょっと違うでしょ？だから、そこを理解してあげれば、良いものが作れるんじゃないかと思ったんだけどね」

掴んでいた手をパッと離してにこりと先輩が笑んだ。春色の美貌がほろりとほころぶ。その雪解けを見ながらなるほど、とひとりごちた。先輩の言葉は一理どころか百理くらいある。見た目に気を使い出すタイミングとしてこの上なく有力だ。

例えるなら蘭ちゃんが新一くんの事を想ってドキドキしながらお化粧をしたら、それは牡丹も芍薬も恥じらう程の愛らしさだろう。考えるだけでもときめいてしまう。

つまり私に足りないのは圧倒的リサーチ不足。マーケティング把握が成ってなかったのだ。

『先輩ありがとうございます！砂漠状態だった思考回路に恵みの雨が!』

「うわ急に声大きいわね…でもそれなら良かったわ。残業減らしましょうね!」

輝かしい笑顔で先輩とハイタッチする。勝機は我の手にあれ!みたいな気持ちだった。なお先輩の笑顔は生暖かった。




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