対処法123 ページ32
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『お、おわぁ……』
「あんまり凝ったモノは作れなくて、悪いんだけど」
スコッチが頬を少しかきながら言う台詞に上手く返せず、あ、とか、うぅ、とか意味の分からない喃語を発する私は役立たずにも程がある。いやでも、これで手抜きとか言われてしまっては、こちらの立つ瀬がないのだ。
平皿に乗っかった半熟の目玉焼きの隣に転がる焦げ目のついたソーセージ。青の長皿にのせられた焼き鮭と、桜の描かれたお茶碗にもられたつやつやの白米の組み合わせが悪魔的だ。
白の小鉢にもられたほうれん草からは香ばしい胡麻の匂いがする。ガラスの小皿にはりんごで作られた兎が2羽。こんなんときめいてしまう。
ここの所何もつけてない食パンの切れ端を飲むヨーグルトで流し込むという朝ごはんをとっていた私は、この光景で急に正しい朝の生活というのを思い出した。
「和か洋かはっきりしろって感じで申し訳ないんだけどな」
『え? そんなのきにしますか……? こんなに美味しそうなのに……?』
むしろ何故うちの冷蔵庫の中身だけでこれが作れるのか。
スコッチは凝ったものが作れなくて悪いと言ったが、朝ごはんなんて単純でいいのだ。一日の一番最初に舌に触れるご飯なのだから、あんまり洒落た複雑なお味では脳がバグってしまう。
そーいうのはお洒落なカフェのモーニングとかに任せておけばいいのだ。餅は餅屋といった具合で。
自炊ビギナーが偉そうに何をと思うかもしれないが、結局これが真理である。 今はそんなことより、スコッチがこれを私の為に作ってくれたという事が問題だった。なみだでそう。
「ここの所疲れる事続きで、禄な朝ごはんも食べれてなかっただろ? 不味くはないと思うからさ、差し支えなければ食べてくれるか?」
『か“ん”しょ”く”し”ま”す”』
湯気をたてるホカホカした、久しぶりの自炊しゃない朝食。更に推しが作ったということで価値が高騰している。ここの所の理不尽な疲れが全て吹き飛ぶようなあり得ない幸せが、ダイニングテーブルの上に所狭しと並んでいた。
『頂きます!』
しっかりと手を合わせてから箸をとる
Aを、スコッチは頬杖を付きながら眺める。
Aは小鉢を手に取ると、小さく口を開けて和え物を運んだ。野菜から食べるのは賢い食事だ。油の過剰な吸収を防ぐからである。少しパサリとする胡麻と、それ以上にみずみずしい菜野菜が香り高い。
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レモン - めちゃおもろいです!!夢主ちゃんの性格大好きです!更新楽しみにしてますっ! (12月12日 10時) (レス) @page43 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大大大大大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (11月14日 20時) (レス) @page43 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - イヤァァァァアオワッタ好きですで (9月18日 15時) (レス) @page43 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
猫目 - すごく好きです (7月15日 14時) (レス) @page43 id: 5daa8eb0a9 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 真咲さんカッコイイ❗更新頑張って下さい!😆 (7月5日 23時) (レス) @page42 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんず | 作成日時:2019年12月28日 20時