対処法117 ページ26
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でも、と続けて、スコッチは緩やかに息をはいた
「あの日、手を伸ばしてくれた君が、俺には神様みたいに見えた」
訳がわからなくて、ずっとあの路地裏にいた
女の子が心配してご飯を与えようとしてきたが、到底食べる気にはなれなかった
俺は人間で、でももう死んでて、今は猫で、そもそもここはどこなんだ。俺は生まれ変わったのか? これからどうすれば。どこにいけば
途方にくれて、雨にうたれて、体を丸めてじっとしていて
「そこに、君が、来たんだ」
警戒する俺を腕のなかに引きずり込んで、炉を灯した様な両目で、痛いほどの正しさで、抱き上げてくれた
可笑しい事だったのだ。終わりそうなはじっこに、また偶然が落ちていた。神様はどうやら随分と俺を過剰評価してくれているらしい。俺はあんな逃げるような死に方をしたくせに、居場所を与えるなんて
「ほんとに、ほんとに。本当に感謝してるんだ。君が風邪をひいたときは心配だったし、ストーカーに傷つけられたときは許せないと思った。もうここにはいられないけど、君と過ごした事は楽しかった。冥土の土産に‥‥出来ると思う」
『‥‥‥え』
ちょいっとフードを被り直しながら照れ臭そうに言った彼に、私は一拍置いてから絶句した。今何て言ったの? 冥土? え、メイド?
『な、なんでですか!? ここには、居られないって‥‥』
「なんで、って‥‥そりゃ居られないだろ。若い女の子の家に、幽霊とはいえこんなおっさんが一つ屋根の下とかまずいだろ」
『え、いや‥‥?』
まずい‥‥まずいのか‥‥? そもそも幽霊と同居したことなんてないからわからんのだが‥‥
『ま、まずいことあります‥‥?』
「いや。まずいだろ」
『‥‥まずくないんじゃないですか? ほら、ス‥‥ヒカリさんって幽霊じゃないですか。何もまずくないでしょ、ね??』
危うくスコッチと呼びそうになって、慌ててヒカリと急変換する。ヒカリにさんづけって違和感ヤバいな。
ていうか、スコッチって全然おじさんって年齢じゃないでしょ‥‥享年25だよ? 25がおじさんとか全国の四十路のおじさんに喧嘩売ってるよ。
『ほら! 私の部屋って、結構広いですし‥‥ネコじゃなくなっても、一人くらいなら大丈夫です! それに、今出ていっても状態的に逆戻りじゃないですか。安心して天国に行けるまで、ゆっくりしたってバチは当たらないと思うんですよ!‥‥‥ だか、ら‥‥』
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あ - 面白くて一気見した者です、もう更新されないんですね、この感じだと……。残念です (5月4日 12時) (レス) id: a4dff3124d (このIDを非表示/違反報告)
レモン - めちゃおもろいです!!夢主ちゃんの性格大好きです!更新楽しみにしてますっ! (12月12日 10時) (レス) @page43 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大大大大大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (11月14日 20時) (レス) @page43 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - イヤァァァァアオワッタ好きですで (9月18日 15時) (レス) @page43 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
猫目 - すごく好きです (7月15日 14時) (レス) @page43 id: 5daa8eb0a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんず | 作成日時:2019年12月28日 20時