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わざとらしく肩を竦められた。
「そうかァ。そうなるとやはり国のひとつやふたつは消し去らんとならんか。いやぁー仕方ないですね、こっちが穏便に済まそうとしてるのにそれを無碍にされちゃあね、そうなるとこっちも暴力を出さざるを負えない」
「は!?それとこれとはなにも、っ!」
「関係あんだよ。」
いいかよく聞け。
グッと前髪を掻きあげられ、爛々と紅く染まった眼が私を捉えた。
逸らすことを許さず、脳の機関部に直接叩き込まれたような鮮烈さに、一瞬、まるで呼吸を忘れたかのように口がはくっと開いた。
「我々がなぜこの世界を滅ぼさないか分かるか?最高の娯楽が失われるからだ。お前らが抗い、抵抗し、無様に這いずる様が、それでもなお泥にまみれて立ち上がる様がなにより俺たちを楽しませる。あの手この手と戦略にも満たないサル知恵を働かせて挑んでくるお前らを我々は高く評価してるんだ。そしてなにより、」
"魔力持ち"
「っ、」
グルッペンが興奮したように私の枕元に手をついた。ほんの目と鼻の先で牙を剥かれ思わず息を飲んだ。
「お前らの存在は俺たちをさらに喜ばせてくれた。人の器でありながら魔力を持って生まれるなど、俺たちが渡り歩いてきた世界で唯一、初めてのことだ。そしてお前らの魔力と血は、」
「い゙っ!」
なにものにも変え難いほどに甘美だ。
ガリっという音とともに唇に噛み付かれたのが分かった。痺れるような痛みに身が竦む。熱を持ち始めた傷口をペロリと舐められた。
「いいか?抵抗しても構わん。ある程度の自由と安全は確保してやろう。そのための契約だ。縛り付けて無理やり吸い取ってやることも出来るがそれでは面白くないからな。俺に身を捧げろ。そうすれば何百何万人の命を救えるんだ。立派な勇者様じゃないか、なぁ?お前のためにサインする理由までつくってやってるんだ。いやーなんて優しいんだろうな」
再び契約書を差し出したグルッペンがドヤ顔で首を傾げる。その様は勝ちを確信したようで、さも嫌そうに顔を歪ませる私をからかっているようだった。
「ハイル・グルッペン。そう言えば契約成立だ」
「そ、ん、っ・・・う、ぅー・・・!」
「なぁに唸ってんだよ。逃げ道なんかねぇんだからあくしろよ」
「くっそ・・・!」
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あまぎ(プロフ) - しおりんさん» gルさんの瞳の色が青や赤に変わるのに疑問を持ったセリフです!久しぶりに読み返しましたが描写の印象が薄くて分かりにくいですね…せめて分かりやすいセリフに変更しとこうと思います。また何か疑問があればコメントくださる嬉しいです!ありがとうございましたー! (2020年9月9日 3時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - 11の『あ、れ?瞳の色が、』ってどういう意味ですか? (2020年9月9日 0時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ろん(プロフ) - う、うわあああ、、、、!!! そ、そんなに言ってい頂けるなんて、、、、!!!これからもあまぎさんの書かれるお話を楽しみにしております。 (2019年12月11日 10時) (レス) id: e80195a521 (このIDを非表示/違反報告)
あまぎ(プロフ) - ろんさん» 拝見した瞬間「え、うま…」とリアルで言いました。可愛っ!素朴で芯が通ってる雰囲気に清廉された可愛らしさがあり大変ヨロシオス!!!!!!!いいもの見せて頂きました。夢主ちゃんにはこれからも魔王軍に苦労して頂きます…頑張ろうな。イラストありがとうございました! (2019年12月11日 7時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
ろん(プロフ) - こんな感じで描いてみました。http://uranai.nosv.org/img/user/data/5/cye/5cee1e2d27d68efd0990e96722f9c62a.png (2019年12月10日 15時) (レス) id: e80195a521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまぎ x他1人 | 作成日時:2019年11月3日 20時