立待月 ページ10
モンスターside
「は？」
「だから、下手したらあいつは火あぶりになるっ…。
もう俺どうしたらいいかわかんねぇよ！」
何を言っても動かないAを一先ず協会で待たせて、一部の村人は森に叫んでいた。
「つれてこいや!!」
「何を言っても動かないんだよ！俺らだって努力した！」
"お願いだ…。なんでもするから、俺らの願いを一つだけ聞いてくれ……"
"ごめんなさい。私愛してしまったの。哀しいあの人を。
あなたたちも、よく分からないけど、きっと、大好きなんだと思うから。
だから……"
そのお願いは、聞けないわ。
「じゃあ、私達はただAちゃんが死んでいくところを見るしか出来ないの…？」
絶望したように目から涙を流し続ける麗日。
それから村人は目をそらした。
「なんで、Aちゃんは僕たちが死ぬ時はなんでも出来たのに、
自分はお構いなしなんだろうね…」
緑谷も青い顔をしながらただ笑った。
笑うしかなかった。
「……そういえば轟は？」
「轟少年ならA少女に会いにいってるよ」
その言葉を聞いて耳郎は月を見上げた。
「そっか、今日は満月か」
彼は何も知らないであそこへ行った。
暫く森の音だけが耳に届く。
誰かの声が聞こえた気がした。
「お前ら、本当にこれでいいのか。」
「……え？」
相澤が鋭い目つきで生徒を見つめる。
その姿は先生と主張しているようだ。
「お前らは前に戻りたくなかった。
Aが望むならそれでいいと思っていたんだろう？
だが、今仲間が死のうとしている。
それでもお前らはこの世界を望むのか？
帰るのは恐ろしいと拒むのか？」
凛とした声。
先生はこんなときも生徒に答えを促す。
ああ、なんて非情な神だろう。
そして、なんて優しい人なのだろう。
彼だって生徒に愛情をいだいていない訳じゃないというのに。
＿＿＿さぁ、答えは生徒に委ねられた。
生きた死か死んだ生か決めるのは次世代のヒーローたち。
答えを選ぶのには勇気がいる。
でもそんなもの君らはもう持っている。
みんなかっこいい私のヒーローだね、と笑っていた、いつかのAが背中を押した。
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作者名：鬱ネコ | 作成日時：2017年9月15日 22時
