十日夜の月 ページ5
一昨日も悪魔がきて驚いたのに、
「私は麗日お茶子。一応魔女かな！宜しくねAちゃん！」
まさか魔女がくるなんて。
懐かしい笑顔が目に浮かんだ。
懺悔室だから顔は見えないはずなのに。
「…ねぇAちゃん、話すだけでもいいけど、私貴方の顔が見たいよ。
何もしないから、出てきて…くれないかな」
本来なら断るべき。
魔女と会ってなにされるかわからない。
もしかしたら殺されるかもしれない。
でも、
「……っ、ええ。」
私、涙が出るくらい貴方に会いたかった。
.
「誰も見てないよね？大丈夫だよね？」
「見当したところ灯りは協会のしかありませんし…きっと大丈夫」
目の前の魔女は、魔女とは思えないほど純粋そうで、可愛くて、優しそうな魔女だった。
「えっと、ごめんね。何話したいとか決めてなくて…。
話したいことは沢山あるんだけど…」
「……そのほうきで空を飛ぶの？」
汗を出して頬をかく魔女さんが持ってるほうきが気になった。
「え、うん。
あっ！よかったら一緒に飛んでみる？」
「いいんですか？」
笑顔で肯定されて私は言葉に甘えて魔女さんの後ろ側でほうきにのった。
私が乗ったのを確認して彼女はほうきに指先をつける。
と、
「うわぁ、」
浮いた。
どんどん高くなって雲らへんまでくる。
「すごい、これが魔法なんだ！」
「……魔法じゃなくて、"個性"っていうんよ」
心からの感想を口にしたら淋し気な背中で答える。
こ、せい…？
「Aちゃんだって本当はあるはずなんだよ。」
言葉の意味が分からず、私はただ背中にしがみついていた。
「そろそろ戻ろっか」
「………ええ。」
戻りたくない。
あの協会はしがらみだらけで、息もできない。
かといって、抜け出せるものではない。
分かってるのに。
「はい、Aちゃん降りて。もう起き出す人もおる。
早く協会に入って。」
「はい。ありがとうございました。」
貴方たちはモンスター、私は人。
いがみ合うべき存在。
それだけのことが、
「……またね！」
こんなにも苦しくてたまらない。
遠くへ行きたい。何処かに、逃げたい。
なにもかもから。
.
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作者名：鬱ネコ | 作成日時：2017年9月15日 22時
