三日月 ページ3
「はぁ…」
今日は満月じゃない。あの人は現れない。
朝から嫌な話を聞いた。魔女狩り、いつか私も火あぶりになるんじゃないか。
想像しただけで震える。
私だって死にたくないもの。
こんな日ほど貴方に会いたいのに。
貴方が来ない。分かっていても懺悔室に向かう。
彼が来なくても他の人は来るかもしれない。
それに、彼がきてくれるかもという期待をとめられないから。
「満月にしかこないなんて、まるで何かの幻ね。」
そう呟いた途端、懺悔室に誰かはいってくる音が聞こえた。
「シスター様？いるー？」
壁を隔てた向こう側に明るい声が聞こえた。
あちらを繋ぐところは座るところの壁の小さな穴しかない。
「え、ええ。います。」
独り言を聞いていなかったかしら。心配しつつ私は言葉を紡いだ。
「ここで聞いた事は誰にも話さない事を主に誓います。
罪を告白してください」
「ありがとー、シスター様。
じゃあ早速だけど、俺悪魔なんだよね」
さりげない言葉の意味に気づき某前とする。…悪魔、ですって？
「そ、うですか。」
シスターとして滅却すべき相手。
でも、何故だろう。
「うん。悪魔なんだけどさあ、俺らだって人間になってまた仲間になりたかったんだぜ？」
この声が泣きたくなるほど懐かしかった。
高めの、人懐っこそうな優しい声。
「そう、ですよね…。大丈夫です。主は貴方をお許しになられる事でしょう。」
「あっれー？なんだか鼻声だけどもしかして泣いてる？
変わんないなぁ。寂しがりやなんだ。」
鼻をすすった音が聞こえたのか鋭い声で言われる。
…変わんない？
「あの、私達何処かでー…」
「だから昔仲間だった奴らとも会えなくてさー。
……シスター様はおれの仲間になってくれる？」
"なる"と反射的に言いそうになった。
仲間、ああなんて素敵な響き。
……でも、
「私はシスターです。モンスターの仲間にはなれません」
「…………そうだよな。」
私の返しに心底悲しそうな声になる彼を哀れに思ったのか、私は自然と口を開いていた。
「でも友人にはなれるでしょう？」
仲間なんて言えないけど、モンスターの友人の1人や2人居てもいいでしょう？
「ゆう、じん…。え、いいの？」
「ええ、貴方と私は友人です」
きっと、ずっと前からそうだった気がするの。
なぜかしら。
「…やった。サンキュー！」
「はい。」
涙声で喜ぶ顔が見たくなったのは内緒なの。
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作者名：鬱ネコ | 作成日時：2017年9月15日 22時
