悪役少女は捻れた世界で何を想う【twst】 (ページ8)

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０章＿第７話：宙に浮く生き物ページ8

学園長が困惑している隙を見て、彼に捕まっていた生き物が勢い良く宙へ逃げ出した。

「だったらその席、オレ様に譲るんだゾ！」

「あっ、待ちなさい！この狸！」

「そこのニンゲンと違ってオレ様は魔法が使えるんだゾ！だから代わりにオレ様を学校に入れろ！魔法ならとびっきりのを今見せてやるんだゾ！」

一体何を……。

「皆伏せて！」

赤毛の少年がそう叫ぶ前に危険を察知したセベクが私を庇う様に身を屈めた。

「ん゛～な゛～～～！！」

宙に浮くあの生き物が叫ぶと周囲が青い炎に包まれる。

「あの狸め！！お嬢様が火傷でもしたらどうしてくれる！！」

＿＿＿……熱い。熱い。熱い。

あの悪夢が頭を支配する。

熱いよ、死んじゃうよ兄様。もうあんな目には会いたくないのに。

嫌だ死にたくない。死にたくない！燃やされるのだけは嫌だ！！

「お嬢様！！」

「っ！」

「…大丈夫ですかお嬢様。ハーツラビュル寮とオクタヴィネル寮の寮長があの狸を捕獲したのでもう大丈夫ですよ」

彼の言う通り、もう周囲の炎は消されてあの生き物はもう居なくなっていた。
よかった…。こんな場所で泣いてしまってはディアソムニア寮の品格が疑われる。

「少々予定外のトラブルはありましたが入学式はこれにて閉会です。各寮長は新入生を連れて寮へ戻ってください。
……ん？そういえばディアソムニア寮、寮長のドラコニア君の姿が見えないようですが…」

その名前に私とセベクが大きく反応する。
それに他の生徒もざわつきだした。

「…アイツがいないのはいつもの事だろ？」

…ん？

「あれ、もしかして誰も式の事伝えてないのか？」

「そんなに言うならアンタが伝えてやればよかったじゃない」

「うーん。でもオレ、アイツのことあんま知らないんだよなー」

……兄様、もしかして…ハブられてるの？
私の不安げな様子を見たセベクが「いくら他寮の寮長とはいえ、若様を侮辱するなど万死に値するぞ…！」と怒りを露わにしている。

「ドラコニアって……。まさか、“あの”マレウス・ドラコニア？」

「この学校に通ってるってマジだったのかよ…」

「怖えぇ……」

他の生徒達はマレウス・ドラコニアという名前を聞いて震え上がっている。

「もしやと思って来てみたが、マレウスは来ておらなんだか。“また”式典の知らせが届いていなかったと見える」