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視点:犬飼 理央
最後のお客様は随分長丁場だった。
彩艶ちゃんがcloseの札を出してくれる間に、カクテルグラスや瓶やらを片付けておく。
「お疲れ様〜っ」
やっと二人になれたわ。
「理央さんもお疲れ様」
少し疲れているようだけど、大丈夫かしら。
もう少し一緒に居たいわ…
「…ねぇ…今日は泊まっていかない?」
いかにもびっくり、といった表情で固まる彩艶ちゃん。そのままきょろきょろと視線をさ迷わせて、結局、
「うん、そうさせていただこうかな」
と言ってくれた。
受け入れてくれたことが嬉しくて、足取りは軽くなる。
「じゃあ、お部屋に案内するわ」
「おっ…と」
ごめんなさい、いきなりこんな誘い方をして。
でもわからなかったのよ、本気の誘い方が。
「理央さん…これはそういう?」
彼女も察してくれたようだった。
「彩艶ちゃんが窮屈じゃないように…が一番だけれど、そうね」
丁度彼女が立っていた場所はベッドの近くで、歩み寄る勢いで押し倒す。
「嫌だったら言ってね」
細い指先を絡めとって、甘い香りを吸い込んだ。
「いや…っ」
翠の瞳に涙が滲むのがわかる。
それに気付いたら、もう力を込めておく事なんて出来なくて、彼女から押し退けられるままに退く。
ベッドから転がり落ちた彼女はとても怯えてがたがた震えながら涙を流していた。
「彩艶ちゃん…?」
名前を呼ぶ。彼女の目の焦点が合う。
「あ…ごめんなさ…っごめん、ごめん。違うんだ、嫌じゃないっ、本当に…違うの、嫌わないで」
普段の中性的で落ち着いた振る舞いは消え去って、支離滅裂に言葉を発する彼女はとても弱々しく見えた。
「…大丈夫よ。嫌ったりなんてしないから。」
本当。貴女を嫌うことなんてないわ。
「っ、ごめん、…ずっと、秘密にしてた。嫌われるのが怖くて、嫌で。でもこんなこと、言えなくて…
「ゆっくりでいいわ、大丈夫、大丈夫。」
何があったのかはまだ知らない。だけど話せる時が来たならば話して欲しい。
そんな思いを込めて必死に彼女の背中を撫でた。
安心して欲しくて。
そうしたら、泣きじゃくりながらも、支離滅裂ながらも、話してくれた。
愛する人を自分の手にかけたこと。
罪を償いきれていないと思っていること。
脅されてやったこと。
まだ、行為やそれにつながるものが怖いこと。
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真@アドミーク(プロフ) - 犬キナ@Adom-kさん» ありがとうございますッ、理央様らぶらいくだから…() (2023年1月29日 21時) (レス) @page6 id: 45ce0ca950 (このIDを非表示/違反報告)
犬キナ@Adom-k(プロフ) - 理央が理央してて好き...愛してる... (2023年1月29日 21時) (レス) @page12 id: 31641bb0de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真 @アドミーク | 作成日時:2023年1月29日 20時