おいでよ鬱探索者の森 (ページ16)

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理央様が患うお話。ページ16

「彩艶ちゃん、聞いてくれる？あのね＿＿」

理央さんが、患った。何をかはわからないらしい。症例に前例は無く、治療法がわからない。

どうして。

どうしてカミサマは私から全て奪ってしまわれるのか。私の行いが悪いのだろうな。きっと。
でもそうしたら私を殺してほしい。私の愛する人にもう危害を与えないで。
私は、私はどうなったって構わないから。

「ねぇ、ねぇ理央さんは居なくならないよね？私の側に居てくれる？」

「もちろんよ。ずっと側に居るわ」

「ごめんね、私なんかと…いたから…っ」

「泣かないで、彩艶ちゃんは悪くないわ」

「いやだ…もう…私が」

「違うわ。駄目。」

「だって…、！」

「残りの時間、ずっと一緒にいて頂戴。ね？」

残りの時間だなんて言わないで。
お願いだから、私を置いていかないで…

「…うん」

「うん。おいで、ほら」

ぎゅうっ、と抱き締めてくれる。温かくて、まだ、生きている。

＿＿＿＿＿＿＿

…残りの時間なんてものは用意されていなくて。

私を抱き締めたまま眠ってくれた翌朝には、彼の体温は枯れていた。

「…理央さん」

呼び掛けても答えてくれない。
あのキレイな紫瞳ももう見えなくて。
ただ、ただ人形のようだった。

「あは…置いていかれてしまったね」

でも、

「私も、行ってもいいかな」

手っ取り早く死ねるもの。刃物くらいしか浮かばなくて。階下に無いだろうか。探しにいく。

いつも刃物類を入れてある引き出し。
引いてみると、入っているはずの物はなくて、一通の手紙だけだった。

『操羽彩艶様

こんなところを覗いているっていうことは、きっと私はもう居ないのでしょうね。

ごめんね、彩艶ちゃん。
私もずっと一緒に居たかったわ。

だけど、あなたにはまだまだ生きていてほしい。

ずっと、ずっと愛しています。

　犬飼理央』

「はは、こんなこと、言われたら。生きていくしかないじゃないか…っ」