【派生】おとぎばなし【呪術廻戦】 (ページ5)

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二章ページ5

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　……気分の悪い寝起きだ。ここは、病室か。身体中に包帯が巻かれている。ふと、ベッドの傍に置いてある時計を見る。

「八時」

　時計の針はちょうど八を指していた。それを確認したとたん、冷や汗が垂れる。八時は、登校時間。そして、門が閉まる時間。……勿体ぶらないで言うと、大遅刻だ。

「姉さん！」

　遅刻、急いで。と言いかけたとき、昨夜の残劇が脳裏を巡る。血だらけの姉さん。そして、「自慢の弟」と言い、死んでしまった姉さん。

　最初涙が流れると、そのあとは拭っても拭っても涙が止まることはなかった。姉さんが死んだという事実を知った悲しみ、そして……何もできなかった自分への苛立ち。色々な感情がぐちゃぐちゃになって、何がなんだかわからなくなる。

　しゃくりあげる自分の声しか聞こえなくなる時間がしばらく過ぎて、やっと涙が止まった。腫れた目元が少し痛くて。でも、いくら泣いたって、願ったって、死んだ姉はもう戻らないのに。

「……紫音ちゃん」

　包帯だらけで泣き叫んでいる僕を心配してか、病室のドアを開けて入ってくる祖母ちゃん。

　目元が腫れていることに気がついたのか、ハンカチで拭ってくれる。

「ごめんなさい、祖母ちゃん。姉さん、死んじまった……！護れなかった、何もできなかったっ！」

　そうまた涙を流しながら言う僕に祖母ちゃんは「仕方ないね」と困ったように笑う。

　そして、昔のように、背中を擦りながら子守唄を唄ってくれる。僕はもう、中学生で、そんなんで喜ぶようなやつじゃない。でも、祖母ちゃんの優しさが染み渡ってゆくようで、胸の中に、あたたかい灯りがともったような気がした。

「……ありがと、祖母ちゃん」

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