また会えたら* ページ41
*
俺の心と同じ様に荒れた海が目に入る。
《よく懲りずに出社してくるわね》
《あいつ前の部署でも嫌われてたんだって》
《奥さんにも逃げられたらしいじゃない》
《また君だろ!このミス何度目だ!!》
ヒソヒソと笑う声、耐えない噂話、理不尽な上司の声
頭を駆け回り離れない。
"もう耐えられない"
雨に打たれ、気付けば知らない海の防波堤に立っていた。
ここから飛び出せば、きっとこんな俺でも海の泡となり綺麗と言われる日が来るのかもしれない。
『綺麗ですよね』
｢っ?!｣
誰もいないと思っていたその場所には傘を差した女性が立っていた。
驚きで声も出ない俺を気にすることなく語りかけてくる彼女は荒れた海を綺麗だと言う。
『人魚姫の後を追ったのは何人いるんですかね』
｢……そんなの、知らない｣
『風邪引きますよ』
今から消える男を易々と傘に入れるなんて不必要な気遣い。
｢ほっといてくれよｯ!!｣
彼女の傘を振り払っても歩み寄ってくる。
『どうして?雨に濡れて困ってるのに』
｢偽善者ぶんなよｯ!!分かってんだろ?!俺が今からすることくらい!!｣
『わっかんないなぁ』
とぼけて笑うその女性は俺の顔を覗き込む。
『これまで頑張ってきたのに"水の泡"になっちゃうの?』
｢なんにも知らねぇくせに!｣
彼女に怒鳴ってもただの八つ当たりだってことくらい自分でも分かってた。
数時間前に病気で他界した母の顔が脳裏を横切る。
俺には母しかいなかった
だから高い医療費だって頑張って稼いできた、
仕事がどんなに辛くても。
そして今日俺には誰もいなくなった。
『頑張った事も辛かった事も……貴方がこれからどうするのかも知ってるよ私は』
暖かい声、優しい笑顔、名前も知らない彼女の言葉に何が崩れ泣き崩れた。
｢妹者ー?!｣
『ごめんね、もう行かなきゃ』
暫くすると遠くから低い男性の声がする。
名前とは思えない変わった呼び名に反応して彼女が立ち去る。
"貸してあげる"
彼女から"借りた"傘を握って顔を濡らす涙か雨か分からない水をただ只管手で払う。
｢何してんだバカ!!｣
『ごめんごめん、綺麗だったから』
｢傘は?!｣
『濡れてる人に貸してきたぁ』
｢ほんっとお人好しなんだから!早く車乗りなさい!｣
遠くで彼女の声が聞こえる。
また会えたら、彼女に傘を返すんだ。
命を救ってくれた妹者のことを知るまでもう少し
*
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おかゆ*(プロフ) - 氷狐さん» 返信遅くなって申し訳ありません。良くお気づきになりましたね（笑）わかる人には分かるかなと作ってみました (2019年8月28日 5時) (
レス) id: 8572672a4d (このIDを非表示/違反報告)
氷狐 - お伽噺のやつオオカミは赤ずきんに恋をした(っだっけ?)を元にしてます? (2019年7月6日 14時) (レス) id: 7f7f2a9d56 (このIDを非表示/違反報告)
ツグミ(プロフ) - そうなんですね！！！では気長に待ってます！！！ (2019年2月24日 13時) (レス) id: 85f43de58c (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ*(プロフ) - ツグミさん» ありがとうございます!とりあえず今1話目を書いているので書き終わり次第公開にするつもりなので、少々お待ち下さい! (2019年2月24日 13時) (レス) id: 0a5b73d94d (このIDを非表示/違反報告)
ツグミ(プロフ) - 妹者インカミン3突入おめでとうです！あ、3を見ようとしたらパスワードかかっててみれませんでした！すごく楽しみなのでパスワード教えてくれたら嬉しいです！！！お願いします！！ (2019年2月24日 11時) (レス) id: 85f43de58c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ | 作成日時：2019年2月6日 20時
