ラ ページ11
憲剛side
***
病室には無機質な機械音しか聞こえない
あの後勘ちゃんはAの主治医に呼ばれて病室を出た
Aの母さんはまだ戻ってこない
俺はいつも座っている来客用の椅子に腰を掛けてコイツの手を握る
「・・・・」
後一時間で今日も終わる
この間にAの意識が戻らなかったら本当にまずいことになっちまう・・・
Aにも会えなくなっちまう
「・・・(ボソッ)そんなの絶対嫌だ」
コイツに会えなくなるなんて絶対に嫌だ
またコイツとケガレ祓いに行きたい
つまらないことで笑い合いたい
約束していた本土への旅行にも行きたい
Aの笑顔をみたい
それに何よりも
まだ,俺はお前に伝えたいことがあるんだ
「だから目を覚ましてくれよ・・・」
お前のことが好きなんだよ・・・
どんな結果になるかなんてわかんねぇだけど
この気持ちをお前に伝えたいんだよ
「けん・・ご・・くん?」
「A!?」
Aが目を開く
まだキツそうに見えるが意識を取り戻した
「主治医呼んでくる‼」
そう言うとAが俺の手を握る力が強くなった
「呼ばなくていい・・・から・・
それより・・・私の・・話・・・聞いて・・くれる?」
もうコイツには時間がねぇんだ・・・
主治医を呼びに行くのは諦め俺はただ頷いた
「ゴメン・・・ね・・,けん・・ごくん・・病気を・・・治すため・・に修行・・・してくれ・・・てたん・・でしょ?」
「ったく,勘ちゃんから聞いたんだろ⁉」
そう言うとAは微笑む
どうやら本当のようだ
「でも・・・嬉しかった・・本当・・に・・嬉しかった・・の・・ゴホッ ゴホッ」
「おっおい!?」
Aは吐血する
「ハァ・・ハァ・・もう・・そろそろ・・・かな・・」
「ッ」
Aは微笑んでいた
死ぬのが怖いくせにこいつは笑っていた
「・・・けん・・ご・・
・・・大好き・・でし・・・た。・・・サヨナラ・・・」
「!・・・ああ。俺もお前が好きだ。
ずっとお前が好きだ‼」
「・・・フフ・・あり・・が・・」
『ありがとう』と言いかけてAは
短い生涯に幕を閉じた
「・・・クソッ・・・クソッ!?」
俺はただ冷たくなったAの体を抱き締めて
泣いた
Aを助けられなかった後悔と自分の無力さへの怒りと
そしてAを一生愛し続けることを
自分に覚悟させるために___
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いおらん(プロフ) - まりさん» わぁ,ありがとうございます。はい,時間が出来ればまたこんな感じの短編を書かせていただきます。 (2019年3月28日 16時) (レス) id: 5c7aed6e66 (このIDを非表示/違反報告)
まり - とても良い話でした!また、こんな感じの話(短編)を書いていただけないでしょうか? (2019年3月28日 0時) (レス) id: d65706e307 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いおらん | 作成日時:2019年3月22日 1時