検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:3,864 hit

ゆりかごに沈む 人魚姫 Nakamu ページ18

深い、深い藍色の世界だった。全身が怠くて、沈んでいく、重苦しい藍色の世界。息をすることもできなくて、暗くて、ただ…

ごぽ

息を吐けば、沫が揺れた。段々瞼も重くなってきて、ただ流されるままに、目を閉じた。

ごぽ

「…ねぇ」

刹那、女性の声が頭の中に響いた。それはまるで瓊音のようで、気持ちが悪いくらいの静寂に何度も何度も反響した。重い瞼をハッと持ち上げれば、俺の、目の前には、女性が。

「大丈夫?」

また、一言。彼女の声が耳に入るたびに俺の頭はぐわんぐわんして、脳震盪を起こしているようだった。そして何より、声が出ない。大丈夫じゃない、とはくはく口を動かしても、そこからは何かがもれるばかり。

「…すぐだから」

投げ出していた手が掴まれ、引き寄せられる。冷え切った体に柔らかく温かい人肌が当たって、何だかくすぐったい。そしてそのまま…


*・*・*・*

「…む……なかむッ!!」

聞き覚えのある友人の声で、目が覚めた。肩に結構な体重がかかっていて、そちらを見れば不安な顔をしたきんときがいた。

「バッカ!お前…何で…」

まだぐらぐらする頭を押さえ、見回せば俺を囲むようにみんながいる。よくよく考えれば、あぁ俺崖から海に落ちたんだ、と気絶する前のことを思い出すことができた。

「いやぁ、お前運良かったなぁ」

きりやんが言うには、捜しに行こうと崖下の浜辺に行ったら、もう俺はそこに打ち上げられて倒れていたらしい。幸いにもそんな水も飲んでいなかったらしく、もう本当に奇跡としか言いようがない状態だったのだと。

「…そうだ」

そんな中、頭の中を過ったのはあの夢だった。そうだ、水中を揺蕩っていたら、すっげー綺麗な女の人が…下半身が魚の、人魚が、俺の手を引いてくれたんだよ。きっとあれは幻想じゃない、そう、彼女がきっと俺を救ってくれたんだ…

「はぁ?」
「え、マジで言ってる?」

しかし、俺がどんなにそれを熱弁しても、彼等はそれを信じてはくれなかった。お前疲れてんじゃね?とか、何か色々起きすぎて幻覚見たんだろとか、頭沸いてるだろとか、くそ、今それ言われても笑えねーんだけど!

「とりあえずよ、今日は寝たら?」
「いやだから…」
「はいはいやらかし上手のNakamu君、また落ちないように戻りましょうねー」
「いだいいだいいだい!!」

けれども体は怠くて思うように動かなくて、シャークんにずるずる引き摺られてしまうのだった。

絶対に報われない赤頭巾24時 赤ずきん 暴害組 ×→←The Prologue of Alice in Romantic world 不思議の国のアリス えぬじん



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
10人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

空屋(プロフ) - 新作待ってましたあああああぁ!!童話だああぁ!! (2018年8月26日 11時) (レス) id: 8e09062377 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雛月美鈴 | 作者ホームページ:Nothing  
作成日時:2018年8月23日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。