ゆりかごに沈む 人魚姫 Nakamu ページ18
深い、深い藍色の世界だった。全身が怠くて、沈んでいく、重苦しい藍色の世界。息をすることもできなくて、暗くて、ただ…
ごぽ
息を吐けば、沫が揺れた。段々瞼も重くなってきて、ただ流されるままに、目を閉じた。
ごぽ
「…ねぇ」
刹那、女性の声が頭の中に響いた。それはまるで瓊音のようで、気持ちが悪いくらいの静寂に何度も何度も反響した。重い瞼をハッと持ち上げれば、俺の、目の前には、女性が。
「大丈夫?」
また、一言。彼女の声が耳に入るたびに俺の頭はぐわんぐわんして、脳震盪を起こしているようだった。そして何より、声が出ない。大丈夫じゃない、とはくはく口を動かしても、そこからは何かがもれるばかり。
「…すぐだから」
投げ出していた手が掴まれ、引き寄せられる。冷え切った体に柔らかく温かい人肌が当たって、何だかくすぐったい。そしてそのまま…
*・*・*・*
「…む……なかむッ!!」
聞き覚えのある友人の声で、目が覚めた。肩に結構な体重がかかっていて、そちらを見れば不安な顔をしたきんときがいた。
「バッカ!お前…何で…」
まだぐらぐらする頭を押さえ、見回せば俺を囲むようにみんながいる。よくよく考えれば、あぁ俺崖から海に落ちたんだ、と気絶する前のことを思い出すことができた。
「いやぁ、お前運良かったなぁ」
きりやんが言うには、捜しに行こうと崖下の浜辺に行ったら、もう俺はそこに打ち上げられて倒れていたらしい。幸いにもそんな水も飲んでいなかったらしく、もう本当に奇跡としか言いようがない状態だったのだと。
「…そうだ」
そんな中、頭の中を過ったのはあの夢だった。そうだ、水中を揺蕩っていたら、すっげー綺麗な女の人が…下半身が魚の、人魚が、俺の手を引いてくれたんだよ。きっとあれは幻想じゃない、そう、彼女がきっと俺を救ってくれたんだ…
「はぁ?」
「え、マジで言ってる?」
しかし、俺がどんなにそれを熱弁しても、彼等はそれを信じてはくれなかった。お前疲れてんじゃね?とか、何か色々起きすぎて幻覚見たんだろとか、頭沸いてるだろとか、くそ、今それ言われても笑えねーんだけど!
「とりあえずよ、今日は寝たら?」
「いやだから…」
「はいはいやらかし上手のNakamu君、また落ちないように戻りましょうねー」
「いだいいだいいだい!!」
けれども体は怠くて思うように動かなくて、シャークんにずるずる引き摺られてしまうのだった。
絶対に報われない赤頭巾24時 赤ずきん 暴害組 ×→←The Prologue of Alice in Romantic world 不思議の国のアリス えぬじん
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空屋(プロフ) - 新作待ってましたあああああぁ!!童話だああぁ!! (2018年8月26日 11時) (レス) id: 8e09062377 (このIDを非表示/違反報告)
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