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The Prologue of Alice in Romantic world 不思議の国のアリス えぬじん ページ17

Aは、船を漕いでいた。穏やかな日差しの中、ゆらゆらと揺れる小舟の上で、ふわふわした頭でぎちらぎちら船を漕いでいた。
だって、どうにも退屈過ぎる。景色だって移り変わりがゆっくりすぎて、あんまり目まぐるしすぎるのも考えものだけれども、それでもほとんど変化しない。目の前の話し相手になってくれていたおじさんだって、夏の日差しにやられてすっかり居眠りこいている。どうしたらこんな茹だるような暑さの中心地よさそうに居眠りができるのか、Aには不思議で仕方なかったが、年のせいかなんて聞いてしまいそうになったので何も言わないことにした。つまるところ、もうAには退屈を凌げる手段は、残されていなかった。

「………あら?」

ふと顔を上げ、岸の方を見てみると、面白そうな光景を目にした。
たぬきがぴょこぴょこ歩いているのだ。しかもただのたぬきじゃない、着物を見て、眼鏡をかけて、人の言葉を喋っている。

「おじさん、ちょっと行ってくる。」

「え?………ちょ、おい!」

転寝をしていたおじさんに一声かけ、Aは走り出した。船から岸へ跳び降りると、たぬき目掛けて一直線、全速力で走った。途中で幾度かローファーが脱げそうになってしまったが、何とか履き直していた。


*・*・*・*

日光がほとんど照らさない、狭い路地裏の奥に、Aは迷い込んだ。Aはじめじめした湿った空気は苦手だったが、たぬきに対する好奇心に負け、とうとうここまで来てしまったのだ。
あぁ、どうしよう、ここらで見かけたのになぁ。Aは辺りをキョロキョロと見回したぬきを捜しながら歩いていた、その時であった。

ガコン!

「きゃっ!?」

足元のマンホールがいきなり外れ、A共々真っ逆さま落ちていく。穴は底が見えない程高く、高く、また灯りも無く真っ暗だった。

「嘘!?」

自由落下を止める術はAになく、Aはどんどん下へ下へと落ちていくのであった。


*・*・*・*

「………やれやれ」

その様子を見て、おじさんはようやく目が覚めたよう。風に煽られて落ちた帽子を拾い、頭の箱を直す。

「困ったお嬢ちゃんだ」

どうしようもないくらい強い日差しの中、炎天下とも言えるこの場所で、懐かしいあの本を手に取った。

ゆりかごに沈む 人魚姫 Nakamu→←髪を梳きながら ラプンツェル エーミール



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空屋(プロフ) - 新作待ってましたあああああぁ!!童話だああぁ!! (2018年8月26日 11時) (レス) id: 8e09062377 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雛月美鈴 | 作者ホームページ:Nothing  
作成日時:2018年8月23日 17時

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