今度はお前の番だ 舌切り雀 ひとらんらん 続き × ページ12
「では、大きい方を頂戴いたします。」
媼は恭しく答えた。青年はその答えを聞くと、小さい葛籠を奥の部屋へ戻し、立ち上がると、羽織を着、襖を開けた。外からは夜風特有のひんやりとした風が吹いてきて、外も真っ暗、月明かりだけが、このお宿から家までの道を照らしていた。
「わかりました。ではお送りしましょう。こんな大きな葛籠、持って帰るのは大変でしょうからね。」
何とも至れり尽くせりの対応である。媼は青年に礼を言うと、そそくさと支度を始めた。
*・*・*・*
長い山道を歩く。土を草履で踏みつける音だけが響いていて、ただただ、不気味であった。
「では、私がつけるのはここまでですね。」
村々の灯りが見え始め、傾斜も大分緩やかになったところで、青年は急に歩みを止め、媼に言った。家の前まで送ってくれない青年に、媼は些か腹を立てたが、あんなもてなしをされて手土産も貰い、更には村まで送ってもらったのだからと口には出さなかった。
さようならと言って去っていく青年の背姿を、その影が闇夜に消えて見えなくなるまで見送っていた。
「……さてと。」
すると媼は、いそいそと葛籠を開け始めた。きっと御伽噺の如く金銀財宝が入っているのだろうと考えたのであった。
しかし、そこには。
人の形を成していない、化け物が大量にいたのだ。
「ぎゃああああああ!!!」
媼は思わずひっくり返って手を突いてしまった。涎をだらだら垂らした犬やら何やらの巨大な化け物が、今にも食らいつきそうな様子で媼を見やる。幸いにも動きは遅いようだが、媼はこの化け物と同じ程度の速さでしか走れなかった。
「滑稽だねぇ。」
媼が必死に逃げていると、不意に目の前に青年が現れた。
「なぁ、このクソババア。Aが舌を切られそうになった時、どういう気持ちだったと思う?」
先程のもてなしようはどこへやら、非常に冷酷な声色で青年は媼に問う。
あぁ、A?媼は思い出した。確か夫が可愛がっていた小雀で、障子ののりを食べたから腹いせに舌をちょん切ってやったんだ。そしてようやく老婆は気が付いたのだった。この青年は、自分を陥れ、復讐するために仕組んだのだと。
全ては遅すぎたが。
媼は許しを請う。もう金輪際、二度としないと半泣きになりながら言った。
「やだね」
そんな老婆の言葉を一蹴し、非情にも青年は月光に照らされながら、その刃を振り下ろした。
ドシュッ
聞こえる筈の無い音が、老婆の耳に入った。
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空屋(プロフ) - 新作待ってましたあああああぁ!!童話だああぁ!! (2018年8月26日 11時) (レス) id: 8e09062377 (このIDを非表示/違反報告)
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