3.お弁当の話 ページ3
伊之助「あ、やべえ」
4時間目が終わり、時刻は昼頃。
みんないそいそと教科書をしまい、お弁当を出したり購買へ走っていったり。
私も今朝コンビニで買ってきた菓子パンを取り出そうとしたとき、前の席の伊之助くんからそんな声が聞こえた。
「どうしたの?」
後ろから伊之助くんの机を覗き込みながら問う。
あ、察し。
「お弁当でも忘れた?」
伊之助「なんでわかるんだ?!超能力か?!」
もちろん、超能力なんてものは使えない。
いつもだったら誰よりも早くお母さん特製だという美味しそうなお弁当を机いっぱいに広げるのに、今日は机になにも出ていなかったからそう思っただけである。簡単。
「うん」
だけど面倒くさいので超能力ということにしておこう。
すげえ!と騒ぐ伊之助くんを眺めていると、お弁当を持った炭治郎くんと善逸くん、禰豆子ちゃんがやってきた。
炭治郎「一緒に食べよう!」
善逸「あれ、伊之助まだお弁当出してないの?珍しい」
禰豆子「むー!」
すげえすげえと騒いでいたのがピタリと止み、困ったように俯いた伊之助くん。
蚊の鳴くような小さな声で「弁当忘れた」と言った。
善逸「え、なんで弁当忘れたくらいでそんな落ち込んでんの?好物でも入ってたか?」
伊之助「…い」
善逸「え?」
弁当、ないと一緒にご飯食べられない。
大きな瞳をウルウルさせてそう言った伊之助くん。
意外とそういうとこあるのね。
私は持っていた菓子パンをポンっと伊之助くんの机に置いた。
「あげる、足りないだろうけど」
後は炭治郎くんに貰うなり、善逸くんに貰うなり、なんなりすれば良い。
伊之助くんはウルウルした目で私を見上げた。
あ、なんかその目なにかに似てる。
なんだっけ…
伊之助「い、いいのか?」
「うーん…(昔見たことある目だぞ…)」
伊之助「お前の分はどうすんだよ?」
「前に飼ったなにか…」
伊之助「前に買ったやつは食っちゃいけないんだぞ!腹壊すって紋次郎が言ってた!」
あ、思い出した。
「ピグミーマーモセットだ」
伊之助「あ?ハッピーセットかなんかか?出来たてじゃねーとうまくねえだろ」
「何の話?」
伊之助「あ?!お前が言ったんだろうが!」
ん!っと目の前に突き出されたのは半分になった私の菓子パン。
伊之助「半分やるからここで一緒に食え!」
「偉そうにありがとう、私の菓子パンだけど」
善逸「ついに本音がダダ漏れだ…」
ところでハッピーセットとやらはなんの話だったのだろうか。
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作者名:ゆいこ | 作成日時:2019年12月11日 21時