それぞれの恋愛模様たち (ページ22)

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Type-Nasu 形見

村上side

『それはできません。』

全てが壊れていく気がした。

Aさんは、俺を名前では呼んでくれない。

これ以上、親密になることを拒まれた。

村上「...せやな！俺みたいな男と仲良うはなれんよな。」

言い訳と、愛想笑いを絞り出す。

『そういう事じゃないんです。』

村上「ええよ。ええよ。無理せんで。やっぱ、バツイチはアカンか。」

『違うんです！むしろ、私の方が村上さんと釣り合わないんです。』

村上「Aさん...？」

『少し、話しても良いですか？』

村上「もちろん。知りたい。」

そう言って、Aさんは重い口を開いた。

『私も、バツイチです。夫は、２年前に亡くなりました。』

Aさんが旦那さんと結婚したのは１０年前。

ずっと子宝に恵まれず、不妊治療をしていたが、３年前に断念し、
その代わりにと迎えたのが、スコティッシュフォールドのシンゴだった。

しかしその翌年、旦那さんにスキルス胃がんが見つかり、余命半年と宣告された。

１日でも長くと、あらゆる手を尽くして闘病したが、旦那さんは旅立った。

宣告されてから１年後のこと。

そして、残されたのがAさんと一人息子のシンゴや。

『だから、村上さんとこうやって良い思いをさせて戴いてることが、主人に申し訳なくて...』

Aさんの瞼に溜まった涙が、次々と零れていく。

村上「ご主人、Aさんがずっと悲しんでる姿見てて、嬉しいんやろうか？」

『え？』

今度は俺の番。

曝け出せ。

過去の自分を。