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ﾄﾝﾄﾝ
ﾄﾝﾄﾝ
手の甲を軽く叩く感触。
「A？A、どうした？」
全然眠れてないのに重たい瞼をゆっくり開ける。
霧が少しも晴れる兆しはない。
「具合悪いんか？」
それは、さっぱりとした塩顔。
ぼやけててもわかる。
『・・・・・タカ兄。』
崇裕「ただいま。」
『なんでおるん？』
崇裕「何でって・・・今日はAの誕生日やんか。」
え。
今日？
スマホのロックを解除すれば、4月2日の午前2時。
崇裕「誕生日おめでとう。A。」
そんなこと、言われても嬉しくないな。
崇裕「顔、真っ青やん。飯食えてへんの？」
『いい。』
崇裕「無理なダイエットは毒やで。」
『いいの。』
崇裕「飯食わな腹ぺこで死んでまうやろ？」
『死にたい。』
崇裕「・・・・お前、何があった？」
『死んじゃった。』
崇裕「誰が？」
『横山さん。』
崇裕「え。」
強ばるタカ兄の表情。
『悪い人じゃなかった。』
崇裕「何かしてもらったん？」
『ライブ。』
崇裕「ライブ見に行ったん？」
『歌った。』
崇裕「Aが歌ったん？すごいやん。A、昔から歌好きやったもんな。兄ちゃんも見たかったわ。」
『また、何時でも来ぃやって言ってくれたのに、行かなかった。そしたら、死んじゃった。』
崇裕「つらいな。」
『つらい。』
霧は瞬きする度に、水になって落ちていった。
崇裕「気が済むまで、泣きや。」
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作者名：るびぃ | 作成日時：2024年2月13日 17時
