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『歩ける?』
重岡「とりあえずは。」
手当が終わり、夜間救急を出た私ら。
松葉杖姿が痛々しい。
重岡「腹減った。」
『何も食べてないの?』
重岡「そら、飲む気満々やったからな。淳太にイタズラしてやろうって、100均でゴキブリのおもちゃ買ってきたとこに高齢者マークの車が突っ込んで来てん。」
カバンの中には、例のゴキブリがそのまま入っていた。
『罰当たりが。』
重岡「ホンマやな。」
時間はもう0時前。
今の時間から食事は難しそう。
重岡「あのさ。」
『ん?』
重岡「うち、来る?」
『え?』
重岡「いや。あの、その。そう意味では。ほら、こんな足やし。なんも出来ひん。」
必死やん。
『ええよ。』
重岡「え?」
『してあげよか?』
あんなに腹減ったって言ってた割には、
家に着けば、秒でベッドに潜り込んだ。
あの頃は、まだお互い初めてで、ぎこちなくて。
気持ちよさとか分からなかったけど、
10年も経てば、感度も研ぎ澄まされてて、
大毅先輩と繋がった瞬間、雷に打たれたんじゃないかと思うほど、求めていたピースはこれだったんやと確信した。
重岡「A。上、上手いな。」
『そう?港区女子よりも?』
重岡「今までで1番良かった。」
『私も。』
重岡「ほんま?」
『1番。』
重岡「淳太に勝ったぜ。」
『あのさ。』
恐る恐る、大毅先輩に聞いてみる。
『私ら、あの頃に戻れるかなぁ?』
大毅先輩はなんて答えるやろか?
重岡「それは無理やろ。」
『え。』
重岡「Aが大学辞めさせられて、何も出来ひんかったヤワな男ちゃうねん。今の俺なら、誰よりもAを大事にできる。不安な思いさせへん自信ある。彼氏なんて肩書きよりも、Aの夫になりたい。」
『でも、私。』
重岡「Aは幸せになってええんやで。なんなら、嫌でも俺が幸せにさしたるわ。」
歯がゆくて、大毅先輩の折れた足を小突いてやった。
重岡「いったぁぁぁ!!!」
『足、治ってから言え。』
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作者名:るびぃ | 作成日時:2024年2月13日 17時