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第4話 救出作戦
智洋side
前方よし!
後方よし!
安田先生も、藤原くんも大西くんもおらん。
そーっと、カウンセリングルームの扉を開ける。
智洋「しげ。」
俺の本を熟読してて返事が無い。
智洋「しげ!」
重岡「ん………だれ?」
顔を上げると、虚ろな目でこっちを見るしげ。
智洋「俺やで。智洋やで。」
重岡「ともひろ?」
智洋「迎えに来たんや。」
重岡「……なんで?」
何でって……。
智洋「しげは僕の大切な人やから。」
重岡「たいせつ?」
智洋「……詳しくは後で話すから、まずはこれ着て?」
俺は、調達した仕込みをしげに着せた。
重岡「……これ、制服?」
智洋「そう。俺の学校の。」
しげがデカくてちょっと丈が足らんけど、
小中高一貫ならこの位は許容範囲。
智洋「似合っとる。よし、行こ。」
重岡「え?ど、どこに?」
智洋「課外授業や。小瀧先生がおとぎ話の素晴らしさを教えてくれるで。」
重岡「おとぎ話!?」
智洋「俺、大好きやねん。しげも?」
重岡「大好き。」
大好きと言った瞬間、
しげの目に光を取り戻したように見えた。
智洋「俺は白雪姫が好き。しげは?」
重岡「みにくいアヒルの子。」
智洋「それはどうして?」
重岡「俺な、生まれた時から変わりモンやってからかわれてん。でもな、俺ってそんなにおかしいやろか?」
びっくりした。
しげの言葉は正に、かつて俺が思っとったことやったから。
重岡「やっぱり、俺って変?」
智洋「……そんな事ない。しげは白鳥や。」
制服姿になってしまえば、もうこっちのモンで、
しげは誰にも気づかれないまま、病棟から脱出することに成功した。
◇
小瀧side
智洋「じゃあ、小瀧先生はここにおって。」
小瀧「え!?神山くん!?」
引き止めたくても既に遅く、
神山くんはさっさと病棟へと突き進んでもうた。
小瀧「気味悪……」
僕は明るさを求めて、東館を彷徨った。
小瀧「ICUってここなんや……」
人工呼吸器に繋がれ、
懸命に治療されている患者さんが1人。
小瀧「………なんて美しい人。」
その整い過ぎている顔に思わず釘付けになった。
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作者名:るびぃ | 作成日時:2023年1月22日 21時