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第22話 黄金の裁ち鋏
智洋side
智洋「やめて!なぁ、安田先生ってば!!」
俺は再び病室に押し込められた。
安田「ホンマにしょうもな。」
あんなに優しかった安田先生の言葉は、
今では刃物以上に鋭かった。
安田「さぁ、好きなだけどうぞ。」
安田先生はそう言うと病室を出て行った。
そして、その代わりに現れたのが……
マユミ「さて。始めますね。」
俺よりも幼い少年。
智洋「え?な、何??」
ギュッ
その子は突然、俺に抱きついて、
聞こえそうで聞こえない大きさで、
呪文を唱え始めた。
ドクン!
智洋「ん゙っっ!!」
感じたことの無い激しい鼓動が苦しい。
マユミ「見っけ。」
俺の胸に手を当てると、
目の前が黄金色に光り始めた。
智洋「嫌や、嫌や!!」
マユミ「抵抗したって無駄やで。」
ヌルッ
凄く気持ち悪い感触。
俺の胸で光るものを掴むと、
光と同じ色をした刃物が出てきた。
智洋「なんでそんなものが?」
マユミ「それが俺らの役目やから。」
俺“ら”?
そう言うと少年は俺にやったように、
自ら胸に手を当てて同じような刃物を出すと、
二つを重ね合わせた。
智洋「な、何なん?」
マユミ「運命を断ち切る鋏や。」
◇
濱田side
ムラコ「崇裕!!」
濱田「ムラコーーー!!!」
なんで?
なんで??
ムラコは看護師たちに引っ張られ、
再び病室へと入れられた。
すると、割り入るように町長さんが口を開いた。
横子「タカヒロ………こんなに立派な大人になって。」
濱田「へ?ま、まぁ…………」
横子「可哀想に。」
可哀想?
俺が?
濱田「それは、子供のことやんな?」
横子「何を今更。タカヒロは大人になっては行けなかったの。」
濱田「大人に?」
横子「今からでも遅くないわ。早く運命から断ち切らんと。」
う、運命を?
断ち切る??
横子「マユミ。おるやろ?」
マユミ「うん。準備万端。」
町長さんの合図で突然現れた少年。
マユミは、ムラコが産まれた子に付けるはずやった名前。
何で同じ名前の子がおるんや?
マユミ「教えてくれた呪文、ちゃんと出来たで。」
横子「ホンマに出来た子やわ。」
少年の手には、煌びやかに光る黄金色の鋏。
横子「タカヒロ、これで自由よ。」
そう言うと、俺の目の前でチョキンと鋏を動かした。
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作者名:るびぃ | 作成日時:2023年1月22日 21時