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第15話 吉兆
智洋side
智洋「くそぅ……なんでこんな目に。」
牢屋みたいな病室。
俺って、何でいっつもすぐに捕まってまうんやろう?
重い精神疾患の患者さんのうめき声が響く。
智洋「この声聞いとったら、俺まで頭おかしくなりそう。」
すぐにでも心折れそうや。
「ったく、うっさいのぉ!!」
智洋「え?」
奥から聞こえたのは、馴染みのある声。
うめき声はパタリと消えた。
智洋「ムラコさん?ムラコさんやんな?」
ムラコ「その声………智洋くん!?」
ホンマにムラコさんや!
智洋「どうしてここに?」
ムラコ「こっちのセリフや!横子とかいう女にぶち込まれてん!」
智洋「俺もです!ほんなら、しげも!」
ムラコ「あの女、私の子を攫いよって。何が目的やねん!?」
部屋が施錠されてて外に出ることは出来ひん。
けど、微かに空いた通気口から互いの声を聞いとった。
幸いなことに、ムラコさんは記憶が消えてなかった。
智洋「え!?子供?いつの間に!?」
ムラコ「安定期にもなってへんのに、攫われたら危険やって、崇裕が言うから、魔法で無理矢理産んでん。ほんなら、すぐにバレて取られてもうた。」
智洋「そんな……」
ムラコ「男の子やってん。名前はマユミ。……生きてるやろか?」
ムラコさんの壮絶な出来事に、言葉が出なかった。
すると、ムラコさんはそういえばと、また口を開いた。
ムラコ「あの町長、たまにヨコの声に似てる気がしてん。」
お父さんに?
そうか!怒鳴り声に感じた違和感は。
智洋「それは何が考えられるん?」
ムラコ「北欧神話にロキって神の端くれみたいなのがおんねん。変身して性別も変えられるトラブルメーカーや。横子の正体はそれやないかって睨んどる。」
ロキ……
まだ読んだことのない物語や。
ムラコ「ヨコの魂やら、身体を使って悪巧みしとるに違いない。きっと、記憶が消えへん私がそれに気付いたからこの中に閉じ込めたんやと思う。もしかするとマユミも………あぁ、悔しい!!なんで私は、こんなにも無力なんや!!」
廊下に響くムラコさんと俺の声。
隔離病棟に閉じ込められた同士で、
あの人の目的を探りあっとった。
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作者名:るびぃ | 作成日時:2023年1月22日 21時