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第12話 私の傍にいるのです
小瀧side
ジリリリリリリ!!!!!!
小瀧「わ。さっそくやってるやん。」
火災報知器の音に、マリアンヌはさっそく火をつけたんやと確信した。
小瀧「ホンマに誰もおらんし。」
ガラス張りのICUには、王子ただひとり。
僕は深呼吸をして、絵本を開く。
小瀧「スゥー………よし。昔々のおはなしです。
肌は雪のように白く唇はバラ色の可愛いお姫様が生まれました。」
お願い!
目を覚まして!
そう念じながら、一生懸命読み続けた。
小瀧「鏡よ鏡。世界で1番美しいのは誰?」
物語はもう後半。
毒リンゴを食べてしまった白雪姫。
小瀧「なんてきれいな姫なんだ。と、王子様は白雪姫の亡骸にキスをしました。すると、喉につかえたリンゴが落ち、白雪姫は生き返ったのです。」
王子……なぁ、起きて!
小瀧「生き返った白雪姫は言いました。“まぁ、私はどこにいるのでしょう?”すると、王子様は答えました。『私の傍に居るのです。』」
二人は幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。と本を閉じる。
小瀧「………起きひんやん。」
目の前の王子は、読み終わった後も目を開けることはなかった。
小瀧「やっぱり、所詮おとぎ話やったんか。」
こんなにも美しい人。
せめて、声だけでも聞いてみたかったな。
小瀧「さよなら、王子様。」
誰もいないのをいい事に、
僕はそっと王子の唇にキスをした。
すると……
小瀧「あれ?何や?なんやこれ!?」
辺りが白い光に包まれる。
眩しくて、目ぇ開けてられへん!!
小瀧「助けて!助けて!!」
真っ白な中、誰かに肩を掴まれた感触がした。
「俺が傍におる!やから落ち着け!!」
聞いたことがある声。
とても安心する声。
すると、光はどんどん弱くなっていった。
ゆっくり、目を開けると……
藤井「…………望?大丈夫か?」
眠っていたはずの流星が僕を抱き寄せてくれていた。
小瀧「どうして?」
藤井「そんなことより、自分の姿見てみ??」
ガラスに映る自分の姿。
小瀧「え…………」
藤井「やっと、戻れたな。」
まるで絵本に出てくる、白雪姫。
小瀧「うっ!頭痛い!」
今度は割れんばかりの頭痛に、再び目を閉じた。
ドクン
ドクン
眉間に波打つ痛み。
小瀧「はっ!!!」
藤井「どうした!?」
小瀧「全部、思い出した。」
流星のことも、神山くんも、しげも、ジュンちゃんも。
そして…………
小瀧「あの町長!!」
藤井「町長が何や?」
小瀧「あの人、エマが悪魔やって預言した医者や!!」
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作者名:るびぃ | 作成日時:2023年1月22日 21時