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#8-12 ページ13

第12話 私の傍にいるのです

小瀧side

ジリリリリリリ!!!!!!

小瀧「わ。さっそくやってるやん。」

火災報知器の音に、マリアンヌはさっそく火をつけたんやと確信した。

小瀧「ホンマに誰もおらんし。」

ガラス張りのICUには、王子ただひとり。
僕は深呼吸をして、絵本を開く。

小瀧「スゥー………よし。昔々のおはなしです。
肌は雪のように白く唇はバラ色の可愛いお姫様が生まれました。」

お願い!
目を覚まして!
そう念じながら、一生懸命読み続けた。

小瀧「鏡よ鏡。世界で1番美しいのは誰?」

物語はもう後半。
毒リンゴを食べてしまった白雪姫。

小瀧「なんてきれいな姫なんだ。と、王子様は白雪姫の亡骸にキスをしました。すると、喉につかえたリンゴが落ち、白雪姫は生き返ったのです。」

王子……なぁ、起きて!

小瀧「生き返った白雪姫は言いました。“まぁ、私はどこにいるのでしょう?”すると、王子様は答えました。『私の傍に居るのです。』」

二人は幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。と本を閉じる。

小瀧「………起きひんやん。」

目の前の王子は、読み終わった後も目を開けることはなかった。

小瀧「やっぱり、所詮おとぎ話やったんか。」

こんなにも美しい人。
せめて、声だけでも聞いてみたかったな。

小瀧「さよなら、王子様。」

誰もいないのをいい事に、
僕はそっと王子の唇にキスをした。
すると……

小瀧「あれ?何や?なんやこれ!?」

辺りが白い光に包まれる。
眩しくて、目ぇ開けてられへん!!

小瀧「助けて!助けて!!」

真っ白な中、誰かに肩を掴まれた感触がした。

「俺が傍におる!やから落ち着け!!」

聞いたことがある声。
とても安心する声。
すると、光はどんどん弱くなっていった。
ゆっくり、目を開けると……

藤井「…………望?大丈夫か?」

眠っていたはずの流星が僕を抱き寄せてくれていた。

小瀧「どうして?」
藤井「そんなことより、自分の姿見てみ??」

ガラスに映る自分の姿。

小瀧「え…………」
藤井「やっと、戻れたな。」

まるで絵本に出てくる、白雪姫。

小瀧「うっ!頭痛い!」

今度は割れんばかりの頭痛に、再び目を閉じた。

ドクン

ドクン

眉間に波打つ痛み。

小瀧「はっ!!!」
藤井「どうした!?」
小瀧「全部、思い出した。」

流星のことも、神山くんも、しげも、ジュンちゃんも。
そして…………

小瀧「あの町長!!」
藤井「町長が何や?」
小瀧「あの人、エマが悪魔やって預言した医者や!!」

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作者名:るびぃ | 作成日時:2023年1月22日 21時

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