#7-43 ページ44
第43話 逃走
智洋side
安田「横子町長。智洋くん、もう入院させなアカンかもしれん。」
横子「そんな………でも、仕方ないですよね。生まれつきこの頭じゃ、社会に出てもご迷惑をお掛けするだけだわ。」
先生、違うよ。
こんな人、俺知らないよ。
ねぇ、パパはどこ?
しげはどこにいるの?
安田「では、病棟をご案内します。藤原くん、連れてって。」
藤原「はい。承知しました。」
藤原くんは俺の肩を掴むと、
薄暗い病棟へ連れて行こうとした。
智洋「嫌や!!!」
俺は咄嗟に藤原くんを突き飛ばした。
藤原「痛っ!何すんねん!!」
横子「捕まえろ!怪我したってかまへん!!」
こんなの何かの間違いや。
逃げなきゃ……
逃げなきゃ!!!
けど、出口は塞がれてもうて、
進める道は、奥の病棟だけ。
窓から出られるやろか?
智洋「ハァ………ハァ………………………………え?」
病棟に入ってすぐの曲がり角を曲がると、
カウンセリングルームのドアが空いていた。
そこには……
智洋「しげ?」
虚ろな目をしたしげは、
俺のお気に入りの本を持って溜息ついた。
やべっ!隠れないと。
横子「あの野郎、どこ行ったんや?」
安田「なんて逃げ足や。」
藤原「でも、窓には鉄格子が付いているので、脱出は無理でしょう。」
鉄格子…………うわ、詰んだ。
横子「とにかく、一部屋一部屋探し……………おい、何してんねん?」
藤原「あ!!!重岡さん、アカンでしょ!!」
俺を追い掛けていた一同は、
しげのいる部屋に入っていった。
智洋「しげの何がアカンのや??」
ドアの隙間から覗き込むと………
安田「またですか……」
横子「ええ加減にしなさい!子供じゃないのよ!!」
藤原「その本のストーリーの妄想に耽って、現実との区別がつかんようになってますね。」
俺が子供の頃に診断された時の内容と一緒。
横子「治したいって言っていたのは嘘だったわけ?」
重岡「いえ、治したいです。」
横子「じゃあ、その本を燃やしてしまいなさい!!」
重岡「ぇ…………」
横子「何か?」
重岡「……わかりました。」
本を燃やすやと???
智洋「あ。見つかる前に逃げな。」
俺は病院から抜け出した。
33人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るびぃ | 作成日時:2022年9月22日 22時